研究課題/領域番号 |
17K06758
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
戸田 穣 金沢工業大学, 環境・建築学部, 准教授 (00588345)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 慰霊の空間 / 建築の記念性 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、研究計画の初年度にあたる。研究は日本国内における慰霊空間の全体像を把握するための資料調査と、具体的な個別の慰霊空間についての調査からなる。前者については、総務省が提供する「全国戦災史実調査報告書」中の、「全国の戦災の追悼施設・追悼式」を基本的な資料として、(1)主要な慰霊空間のリスト化と、掲載写真にみられる様式的な特徴から (2)慰霊碑・慰霊空間の類型化を行った。(2)慰霊碑・慰霊空間の類型化としては、上記報告書中では、その形状に応じて「塔・碑・墓」「像・モニュメント」「地蔵・観音」「堂・建物」の分類がなされており、様式的な際には注目されていない。本研究で近代主義による慰霊表現に注目して再検討を行った。今後の課題は、戦災復興都市に指定された115都市の復興計画内における慰霊空間の位置づけを検討することである (3)重要な慰霊空間についての個別調査については、千鳥ケ淵戦没者墓苑(東京都千代田区)、太平洋戦争全国戦災都市空爆死没者慰霊塔(兵庫県姫路市)、世界無名戦士之墓(埼玉県越生町)、東京都戦没者霊苑(東京都文京区)について現管理者への聞き取りと資料調査を行った。また東京都戦没者霊園の設計と政府建立海外慰霊碑の設計者に聞き取りを行い、戸田が担当編集を務めた日本建築学会学会誌『建築雑誌』2017年7月号特集「建築は記念する」に掲載した。同号では20世紀後半の戦災ならびに震災後の記念空間・記念碑の問題について批判的に検討をおこなった。 また海外の慰霊空間との比較として、フランスとの比較を進めている。今年度はフランスのアルザス・ロレーヌ地方を中心に実地調査と文献調査をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の課題であった全体像の把握を、今後に個別に取り組むべき慰霊空間の把握を進めることができた。また建築の記念性については学会誌の編集を通じて空間の記念性についての原理的な問題を提示することができた。
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今後の研究の推進方策 |
重要な慰霊空間についての個別調査をさらに進めていく。とくに広島、長崎を代表とする戦災復興都市計画における慰霊空間の位置づけにアプローチすることが課題である。また建築の記念性をめぐる記念空間論を推し進めるために谷口吉郎、菊竹清訓、相田武文各氏の慰霊碑・慰霊空間の分析を深めることを課題とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は旅費70万円を予定していたが、約50万円となった。差額については、次年度の国内外の現地調査・資料調査を進めるために使用する計画である。
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