慰霊は戦争だけの問題ではない。近年の度重なる自然災害や、日常的な交通災害などにおいても、慰霊は必要とされている。そもそも人は皆亡くなるのであるから、慰霊は日常とも地続きの問題である。このような社会的な要請がありながら、その空間のデザインについては国内のきわだった事例を除けばこれまで十分な考察がなされてこなかった。個人の内面における祈り(祈念)の感情だけでなく、社会の中でより公共的な記憶(記念)を実現しようとするとき、そこに集う人々を包摂する空間が重要になる。これまでに構想され、建設されてきた慰霊の空間について考察し、記念性の空間的な表現に注目することには社会的な意義がある。
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