研究課題/領域番号 |
17K06764
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
冨田 英夫 九州産業大学, 建築都市工学部, 准教授 (80353316)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バウハウス / 建築教育 / ハンネス・マイアー |
研究実績の概要 |
本年度は次の内容を研究発表し、当該研究課題の研究的枠組みを示した上で、特にバウハウス建築教育の成果としての学生作品に関する内容を重点的に明らかにした。 まず、2017年9月に、国際会議「The Second Asian Conference of Design History and Theory」(東京)において「Hannes Meyer’s Scientific Worldview and Architectural Education at the Bauhaus (1927-1930)」と題した研究発表を行った。この論文発表により、2008年度から2009年度までに実施した研究課題「マイアー主導のバウハウス建築教育における心理学、生物学、社会学、統一科学の空間化」の成果を総括し、その後に得た新しい知見を加えて論じることで、改めて本研究課題のバウハウス研究における位置づけと目指すべき点を確認した。 次に、マイアー主導のバウハウスにおいて教授された典型的な手法である「日照範囲の分析」について、2017年8月に、国際会議「The 11th Asian Forum on Graphic Science 2017」(東京)において「Analytic Drawings of Sunlit Areas in Bauhaus Architectural Education under Hannes Meyer (1927-1930)」と題して研究発表を行った。この発表の結論部分の内容を発展させて、日本建築学会九州支部研究報告会(2018年3月)において報告梗概としてまとめ研究発表した。 資料調査としては、2018年2月にヴァイマール・バウハウス大学資料館にてバウハウス卒業生コンラート・ピュシェル関係の資料収集を行い、同資料館が所蔵するピュシェル関係の資料は閲覧を済ませた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、未だ不明な点が多いマイアー主導バウハウス建築教育の内容について、1.バウハウス建築科のカリキュラムの変遷の把握、2.学生作品の網羅的収集とその特性の分析、この2点から明らかにすることを目標としている。【研究実績の概要】に示したように、今年度は前年度から所属大学の制度を利用しドイツに研究滞在したため、本課題のスケジュールを前倒しして実施し、国際学会で論文も発表できたため「当初の計画以上に進展している」と評価した。 平成29年度は主として、1.バウハウスのカリキュラム関係の資料(トルツィナー資料)の収集と分析、2.学生作品の図面・写真資料(トルツィナー資料、ピュシェル資料、その他)の収集と分析、3.国内学会での研究経過の発表を予定していた。 具体的には、1. バウハウスのカリキュラム関係の資料の収集と分析については、(1)当初予定していたデッサウ・バウハウス財団での資料収集は、同資料館が2019年まで閉館する事になったためできなかった。(2)しかし、当初予定していなかったデッサウ市資料館およびヴァイマール・バウハウス大学資料館において、これまでの研究で未使用と思われる資料を収集できた。 2.学生作品の図面・写真資料についてはスケジュールを前倒しして平成28年度中から断続的に収集できた。特に分析用に高解像度でデジタルスキャンした写真資料は、閉館中のバウハウス資料館とデッサウ・バウハウス財団でも入手できたため、断続的に依頼し、データを入手した。 3.研究成果の発表は国内学会だけでなく、国際学会でも2件の発表ができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、マイアー主導バウハウス建築教育の内容について、1.バウハウス建築科のカリキュラムの変遷の把握、2.学生作品の網羅的収集とその特性の分析、この2点から明らかにすることを目標としており、平成29年度は2について成果を上げたため、平成30年度は1について重点的に分析を加える。作業としては、本年度は主として、平成29年度の1と2の成果についての総合的考察、および追加の資料調査と国際会議における研究成果の発表を行う。 まず1. バウハウス建築科のカリキュラムの変遷については、今年度のバウハウス資料館とデッサウ・バウハウス財団での新規の資料収集はできないため、デッサウ市の資料館での資料収集を行う。それらと既に収集しているトルツィナー資料とを対照する事で、バウハウス建築科のカリキュラムの変遷を把握する。この点は本年度重点的に分析を行う。 次に2. 学生作品の網羅的収集とその特性の分析については、既にある程度の資料収集は終えているため、整理および成果発表を行う。学生作品については、出版資料において紹介されている事例がある事がわかっているため、特にベルリン工科大学図書館等での出版資料の調査を考えている。また前年の成果を国際会議等で報告し議論する予定である。 以上の内容を関連付けて論じることでその成果を総合的に明らかにし、バウハウスの建築教育の内容を近代建築史の上に位置づけて、マイアーの建築教育の歴史的な意義を明らかにする。
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