研究課題/領域番号 |
17K06764
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
冨田 英夫 九州産業大学, 建築都市工学部, 准教授 (80353316)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | バウハウス / 建築教育 / デザイン教育 / ハンネス・マイアー |
研究実績の概要 |
本年度は昨年度に引き続き主に本研究課題の中心となる次の2点について研究した。(1)マイアー主導のバウハウスのデザイン教育における建築教育の位置づけ、(2)個別のバウハウス学生作品についての研究。 まず、1に関して、2020年8月に「建築学生コンラート・ピュシェルをとおしてみるマイヤー主導のバウハウス建築教育」と題した論文がバウハウス100周年記念の国内展覧会『きたれ、バウハウス』の図録に収録・出版された。従来のバウハウス研究は、教師を中心に記述されがちであったが、本論文では多数の教師の授業を受講した学生の視点から、バウハウスの建築教育内容とその成果を論じた。また、マイアーおよびバウハウス学生のピロティの建築手法を、より広い文脈から考察した査読付き学術論文が掲載された。 つぎに、バウハウス学生による個別の建築作品に関して、卒業設計作品「フォーゲルザンク・エルベ共同農場」案(1930)および「集落での近隣と外部の関係」案(1930)について、「第59回日本建築学会九州支部研究発表会」(熊本)にて発表した。「フォーゲルザンク・エルベ共同農場」案は設計過程の史料が残る唯一のバウハウス学生作品であり、分析の結果、設計前の調査結果が設計案の組織構成のダイアグラムとして図化され、ダイアグラムから直接的に設計案が作成された事が明らかになった。 このようなダイアグラムからそのまま建築を立ち上げる設計手法は、マイアーの独特の設計手法として知られているが、マイアー自身によるダイアグラムの史料は確認されていない。そのため、この卒業設計作品は、マイアーの設計手法の内実を伝える貴重な事例と評価できる事が明らかになった。 このように本年度の成果により、マイアー主導のバウハウス建築教育を再評価する要素はそろったものの、当初予定にしていた査読付きの学術論文としての投稿作業ができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、未だ不明な点が多いマイアー主導バウハウス建築教育の内容について、1.バウハウス建築科のカリキュラムの変遷の把握、2.学生作品の網羅的収集とその特性の分析、この2点から明らかにすることを目標としていた。研究3年目の令和元年度は、当初計画していたテーマでの査読付き学術論文の投稿ができず、研究期間を延長したため「遅れている」と評価した。 令和元年度の計画としては、過去2年間の作業についてより総合的に考察を加え、論文集における研究成果の発表のための作業を集中して行う計画を立てていた。総合的な考察として、共著の著書および査読付き学術論文において総論的な考察はできたものの、本課題の総まとめとなるような学術論文は投稿できなかった。国内学会において、個別事例の研究発表は積み重ねているので、過去3年間の研究成果を総合した学術論文の投稿が急務である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、マイアー主導バウハウス建築教育の内容について、1.バウハウス建築科のカリキュラムの変遷の把握、2.学生作品の網羅的収集とその特性の分析、この2点から明らかにすることを目標としており、本来の3年間の研究期間で1および2について断片的な研究発表を行ったため、延長した最終年度は学術誌における査読付き論文の発表に集中する。 まず、1. バウハウス建築科のカリキュラムの変遷については、昨年度刊行された共著の著書において、マイアー主導の建築教育と19世紀ドイツの建築教育改革における理工科学校の系譜との関係を指摘したことから、内容を深めて査読付き学術論文誌に投稿する。 つぎに、2. 学生作品の網羅的収集とその特性の分析については、これまで日本語の学会発表の梗概として、数編の発表を行ったことから、それらを査読付き論文として再構成し、学術論文誌に投稿する。 以上の内容を関連付けて論じることでその成果を総合的に明らかにし、バウハウスの建築教育の内容を近代建築史の上に位置づけて、マイアーの建築教育の歴史的な意義を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
学術雑誌への査読付き論文の投稿作業が想定より遅延したため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、論文の投稿のための英文校正および出版費として使用する計画である。
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