本年度は研究の最終年度として、ひきつづき本研究課題の中心となる次の2点について研究した。(1)マイアー主導のバウハウスのデザイン教育における建築教育の位置づけ、(2)個別のバウハウス学生作品についての研究。 まず、(1)に関して、2021年に「バウハウスにおける建築教育の先進性」と題した論文をデザイン史学研究会発行の『デザイン史学研究会誌』における「バウハウス101年、その後」と題した企画に投稿した。その中で次の3点を論じた。①ヴァイマール・バウハウスにおける学生達は自発的な活動の中で最先端の空間理論を修得した事。②マイアー主導の教育においては同時代のドイツに見られた分析重視・科学志向の設計手法が組み込まれた事。③ミース主導の教育においては最先端の建築的課題を教師と学生が共に探求しながら影響を与え合っていた事。この作業によって次の有用な視点を得た。すなわちヴァイマール・バウハウスにおける学生の自発的な活動は、同様にデッサウ・バウハウスでも成果を挙げていた事から(報告者の既発表論文)、バウハウスの建築教育の理解には、正規のカリキュラム以外に、こういった学生の自発的な活動の位置づけと評価が鍵になるという視点である。 つぎに、(2)のバウハウス学生による個別の建築作品に関しては、コンラート・ピュシェルがバウハウス建築部門で設計を担当した作品「小市場」案について、研究室の指導学生による2020年度の卒業論文の成果を加味して、学生と共著の英語論文を完成させ、英文誌への投稿準備を済ませた。 このように本年度は、前年度に遂行できなかった学術論文としての投稿作業・投稿準備作業を2件実施することができた。
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