現在、ミヤンマーやインド、またタイ南部の諸都市では、少数派であるイスラム教徒(ムスリム)に対する無理解と差別に基づく、対立と暴力が多発している。仏教徒が多数派であるバンコクには、現在、多様な民族的な出自を持つムスリムの192か所のモスクがある。しかし、民族や宗教に基づく対立は、発生していない。その背景には、ムスリムが、バンコクの為政者や社会、既存の都市空間に配慮し、融合しようとしてきた歴史的、空間的な過程があったと考えられる。本研究は、イスラム空間の構成や立地に着目し、その空間的な形成過程を明らかにするものである。
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