研究課題/領域番号 |
17K06769
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
藤川 安仁 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (70312642)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 走査トンネル顕微鏡 / 光電子顕微鏡 / オージェマイクロプローブ |
研究実績の概要 |
STM-PEEM複合装置において使用するため必要となる長い観察距離という条件下でもマイクロメートルスケールの分解能を持つ光学顕微鏡として、エスケーエレクトロニクス社製のデジタルマイクロスコープを本研究において導入し、観察窓の最適化などを行う事により真空装置中にて3マイクロメートル以下の分解能を持つ事を確認した。この顕微鏡をSTM探針の位置合わせに使用することにより、PEEM像と光学顕微鏡像の対応をつけながら20マイクロメートルほどのサイズを持つ酸化グラフェン試料の部分を狙ってSTM観察を行う事が可能である事も確認した。 一方で、酸化グラフェン試料の白金表面上における熱還元実験においては、酸化グラフェン試料の品質により比較的低温で原子層シートが分解する現象が見られ、実験の再現性が課題として浮上してきた。この問題を解決するため、オージェマイクロプローブ装置を使用した局所化学状態分析を各種酸化グラフェン試料に対して適用し、白金表面上における熱安定性と化学状態との相関を調べた。その結果、高エネルギー電子線を使用するオージェマイクロプローブ法においては、電子線が酸化グラフェン試料において酸素の脱離の原因となること、及びオージェマイクロプローブ法にて観察される炭素ピークの強度と、白金表面上での酸化グラフェン試料の安定性の間に相関が有る事が判明し、酸化グラフェン試料の炭素ネットワーク強度の評価にオージェマイクロプローブ法が使用可能で有ること、および酸化グラフェンの還元に電子線照射が有効である可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸化グラフェン試料の白金表面上における熱還元実験においては、酸化グラフェン試料の品質により比較的低温で原子層シートが分解する現象が見られ、実験の再現性が課題として浮上してきた一方で、この問題を解決する上で重要な酸化グラフェン試料の炭素ネットワーク強度の評価にオージェマイクロプローブ法が使用可能で有ることが示され、今後の研究を進めていく上で鍵となる試料の評価法を確立しつつある上、電子線照射が酸化グラフェンの還元に有効であるという新たな知見も得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに酸化グラフェン試料の熱還元において見られる試料依存性が、試料の炭素ネットワーク強度が原因となっている事が判明し、その評価法としてオージェマイクロプローブ法が有用である事が判明した。今後は上記の知見を活かし、供給を受けた酸化グラフェン試料についてオージェマイクロプローブ法によりスクリーニングを行い、良質な酸化グラフェン試料を使用した実験を進めていく。これまでの研究により、白金表面上に生成した単層グラフェンにおいて、変調構造の存在を示すモアレパターンがSTMにより観察されているが、今年度においてはこのような変調構造の持つ電子状態について、STM・STSを使用した局所的な物性評価を試みる事を中心とした研究を進めていく。特に、C60、ペンタセンなど研究代表者が研究経験を有している芳香族系分子性化合物を界面に対して炭素供給源として作用させることにより、還元されたグラフェンシートに対する炭素の補給によるネットワーク強度の強化、および基板の結晶方位と酸化グラフェンの結晶方位の関係をそのまま反映したエピタキシャルグラフェンと還元グラフェンの積層構造の作成などを試み、変調グラフェン構造の作成制御を進めていく。
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