研究課題/領域番号 |
17K06770
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
天児 寧 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (90222679)
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研究分担者 |
中島 美帆 信州大学, 学術研究院理学系, 准教授 (80362614)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 強磁性形状記憶材料 / スズ核メスバウアー効果測定 / 磁気的相互作用 / 磁気・構造相転移 |
研究実績の概要 |
本研究は、磁性がからんだマルテンサイト変態を示す遷移金属化合物が化学量論的組成から外れたところで強磁性形状記憶材料や磁気冷凍材料としての特性を発揮することから、ホイスラー合金Ni2Mn1+xSn1-x系において、119Sn核メスバウアー効果測定により微視的にSn原子の周りの磁気的状態を観測し、磁気および構造相転移の機構を解明することを第一目的としています。 平成29年度は、x=0から0.48までの濃度について磁化測定により良質であることが確認された試料を用い、室温及び90Kでの119Sn核メスバウアースペクトルの測定を行いました。90Kでのスペクトルの濃度依存性より、オーステナイト相の領域ではx とともに内部磁場が減少していること、マルテンサイト相の領域ではオーステナイト相に比べ、内部磁場が減少していることを明らかにしました。ただ、四極子分裂の濃度依存性は小さく、マルテンサイト相とオーステナイト相で有意な差が見られませんでした。今後、スペクトルの変化を詳細に解析し、等方的局所場、非等方的局所場の分離、近接Mnモーメントの方向や数、大きさなどの情報を得ることを試みます。また、規則―不規則変態温度の上下の熱処理によるスペクトルの違いを見るために、様々な熱処理温度の試料を用意しました。このほかにRh2Mn1+xSn1-x系、Ni2Mn1.48-xFexSn0.52系、Pd2Mn1+xSn1-x系、Mn2RuSn, Pd2RuSn, Co2TiSn, Co2NbSn等の 119Sn核メスバウアースペクトルを観測し、NiMnSn系と比較しながら解析を進めています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
57Co核、119mSn核の放射線源の半減期はいずれも1年弱であり、高価であるので、平成29年度は119mSn核線源のみを購入し119Sn核メスバウアー効果測定を中心に行う予定でした。Ni2Mn1-xSn1+x系の良質な試料を合成し、無事、Sn核メスバウアースペクトルを観測することができました。ただ、スペクトルの線幅が広がっているため、Sn核の内部磁場に分布をもたせた解析を行うことにより有用な情報を得ることを試みています。
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今後の研究の推進方策 |
今後は平成29年度に得られた、Ni2Mn1+xSn1-x系のスペクトルの変化を丁寧に解析することにより、アイソマーシフト、四極子分裂、内部磁場の各パラメーターの濃度依存性から、再近接および第二隣接Mn-Mn相互作用のマルテンサイト変態による変化について明らかにすることを目指します。熱処理条件を変えて、規則―不規則変態温度の上下の熱処理による119Sn核メスバウアースペクトルを測定します。スペクトルの違いを見ることにより、より詳細な近接イオンによる内部磁場の変化の情報を得ることができます。更にNi50Mn49.5-x57Fe0.5Snx, Ni50Mn49.5-x57Fe0.5Inx, Ni2Mn1+xSn1-x, Ni2Mn1+xIn1-xの試料を合成し、57Fe核メスバウアー効果測定を行います。Ni2Mn1+xSn1-xとNi2Mn1+xIn1-xについてのMnの磁気構造の違いや、再近接および第2隣接Mn-Mn相互作用のマルテンサイト変態による変化について明らかにすることを目指します。また、NiFeGa系, RhMnSn系, PdMnSn系, RhFeSn系, PdFeSn系などについても同様の測定を行い、NiMnSn系と比較しながら、ホイスラー合金において置換された原子が及ぼす磁気的相互作用の変化による磁気および構造相転移の機構を解明して行く予定です。
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次年度使用額が生じた理由 |
119mSn核の納品が想定より1ヶ月遅れた関係で、測定時間が短くなり消耗品購入予額に達しませんでした。次年度使用額は,平成30年度の請求額と合わせまして,主に消耗品費として使用する予定です。
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