Fe2VAl系熱電材料について、非化学量論組成や元素置換に加えて、高圧ねじり(HPT)加工を利用することで結晶粒超微細化による熱伝導率低減のシナジー効果により熱電性能の大幅な向上を図った結果、以下の成果が得られた。 1. Fe2V0.90+xTa0.10Al1-x合金のゼーベック係数は、x=0.05の合金で310 Kにおいて140μV/Kを示すが、V/Al組成比xの増加とともに絶対値は減少し、ピーク温度は高温側にシフトした。出力因子は、x=0.05の合金で310 Kにおいて最大の5.5 mW/mK2となった。また無次元性能指数ZTは、x=0.08の合金で400 Kにおいて最大のZT=0.29となった。これは、V/Al非化学量論組成と重元素Ta置換の複合効果により熱伝導率が約6 W/mKまで低減したことよる。 2. HPT加工により格子熱伝導率がアーク溶解材に比べて大幅に低減し、とくにx=0.08 の合金においては熱処理後も約1W/mKという低い値を示す。TEMによる組織観察によると熱処理後の平均結晶粒径は80 nm程度であり、熱伝導率の低減はHPT加工による結晶粒微細化に起因している。Ta置換合金では、熱処理による粒成長抑制効果のため超微細粒組織を保持することができる。 3. HPT加工後はホイスラー構造が消失し、ゼーベック係数の値は大きく低下した。しかし、適切な温度での熱処理によりゼーベック係数はアーク溶解材と同程度の値まで回復し、高い出力因子を維持すると同時に、HPT加工後の熱処理によって結晶粒径を制御することで熱伝導率を大幅に低減できた。その結果、x=0.08 の合金において、973 Kで熱処理することで400 KにおいてZT=0.37となり、アーク溶解材と比べ約 27%性能向上した。
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