研究課題/領域番号 |
17K06772
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 康一 京都大学, 日本-エジプト連携教育研究ユニット, 特定准教授 (20314239)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 熱電変換 / ハイエントロピー合金 / 第一原理計算 / デバイス設計 / フォノン物性 |
研究実績の概要 |
材料の熱電性能指数を原子レベルの単位格子を与えるだけで非経験的に評価するシミュレーション手法を確立し、ハイエントロピー合金による新規熱電変換デバイスの開発のための指針を与えることを目的に、その中期段階として平成30年度は下記の内容を実施した。 1. 平成29年度に開発したフォノン拡散関連物性値シミュレーション手法に単一モード緩和時間近似のルーチンを組み入れて、格子熱伝導率および熱電性能指数を予測するプログラムコードを完成させた。手法や計算精度、今後の改良点について、国内外の学会で発表した。 2. 大規模単位格子によるBiSbSeTeCu系ハイエントロピー合金モデルの第一原理計算を進め、力学特性値の解析を行うとともに、開発したプログラムコードを用いてこれらのハイエントロピー合金の熱電性能指数における組成依存・温度依存を導出し、とりわけ内部の乱雑さや銅の組成に対する影響について詳細に検討した。手法や結果の詳細について、国内外の学会で発表した。 3. MEMSデバイスの設計・解析用ソフトウェア(IntelliSuite)を導入し、これまでに設計したp型ナノワイヤ材料とn型ナノワイヤ材料で構成されるナノ構造熱電変換素子にシミュレーションで得られたハイエントロピー合金の熱電特性値や力学特性値をパラメータとして設定し、有限要素法を用いて発生する電流や温度分布を解析することで構造最適化を検討した。 4. 平成31年/令和元年度に実施するハイエントロピー合金物性値シミュレーションの対象となるチタンベースの多元生体材料合金系について、実験による検証のための材料作製と評価をエジプト人研究者と協力して行った。詳細について1報の論文を出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
若干遅れていたプログラムコードの開発については、平成30年度前半に単一モード緩和時間近似によるフォノン緩和時間の影響を加味できるように改良し、格子熱伝導率および熱電性能指数を予測するプログラムコードを完成させた。分子動力学計算・第一原理計算の進行やIntelliSuiteを用いたデバイス設計・解析の進捗はほぼ当初の予定どおりである。研究代表者の所属機関の異動の影響もあって論文出版等はやや遅れているが、実験による検証のための熱電変換材料作製と評価が先行して進んでおり、総合的に見ておおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
大規模単位格子によるシミュレーションは、平成30年度までに取り扱ったBiSbSeTeCu系について改良したモデルを用いて熱電性能指数における組成依存・温度依存の解析を引き続き実行し、熱電性能指数が最大になるような最適な組成を探索する。平成31年度より採択された新学術領域研究(研究領域提案型)とも連動させて、新たにCrMnFeCoNi系およびTiZrNbHfTa系についても検討を開始し、得られた熱電特性評価の結果を取りまとめて成果の発表を行う。 また、これまでに設計したp型ナノワイヤ材料とn型ナノワイヤ材料で構成されるナノ構造熱電変換素子について、シミュレーションにより導出された熱電特性値や力学特性値をパラメータとして利用した有限要素法による解析を引き続き実行する。さらに、熱電アクチュエータなどの熱電変換MEMS/NEMSデバイスを設計・解析用ソフトウェアIntelliSuiteにより新たに設計し、シミュレーションにより導出された熱電特性値や力学特性値を設定することによって変位・振動などのデバイス挙動を有限要素法により解析して、ナノ構造に基づく熱電変換デバイス設計を最適化する。
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