材料の熱電性能指数を原子レベルの単位格子を与えるだけで非経験的に評価するシミュレーション手法を確立し、ハイエントロピー合金による新規熱電変換デバイスの開発のための指針を与えることを目的に、その最終段階として令和元年度は下記の内容を実施した。 1. 平成30年度までに開発した格子熱伝導率および熱電性能指数を予測するプログラムコードを用いて、置換Bi-Te系ハイエントロピー熱電材料モデルの熱電変換特性を導出し、とりわけ置換原子によって大きく影響を受けるフォノン挙動が熱物性にどのように反映されるかについて詳細に検討した。手法や結果の詳細について、国内学会で発表した。 2. 令和元年度より採択された新学術領域研究(研究領域提案型)とも連動させて、TiZrNbHfTa系ハイエントロピー合金についても上記のプログラムコードを用いた熱電変換特性シミュレーションを行い、組成依存・温度依存に関する議論を行った。手法や結果の詳細について、国内・国際学会で発表した。 3. これまでに設計・構造最適化したp型ナノワイヤ材料とn型ナノワイヤ材料で構成されるナノ構造熱電変換モジュールの素子材料候補としてTiZrNbHfTa系ハイエントロピー合金を設定し、MEMSデバイスの設計・解析用ソフトウェア(IntelliSuite)を利用して、2.で行ったシミュレーションで得られた熱電特性値や力学特性値をパラメータとした有限要素法によりナノ構造熱電変換モジュールの性能や関連物性に関するシミュレーションを行い、計算結果を国内学会で発表した。 4. エジプト日本科学技術大学の研究者と連携して、熱電変換特性シミュレーションに用いたTiZrNbHfTa系ハイエントロピー合金材料の冷間変形に関する解析を行うとともに、力学的視点から熱電変換材料への可能性について議論した。
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