研究課題/領域番号 |
17K06774
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
廣井 政彦 鹿児島大学, 理工学域理学系, 教授 (80212174)
|
研究分担者 |
重田 出 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (30370050)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 反強磁性 / スピングラス / 磁気抵抗 / ヒステリシス / ホイスラー化合物 |
研究実績の概要 |
今年度はコロナの影響があり、本研究課題をまとめるために計画していた、学内外での補足的な実験的研究は、ほとんどできなかった。そのため、ホイスラー化合物Fe3-xMnxSiでの複数の反強磁性的な転移について、Mn量xや磁場による変化を詳しく調べることを計画していたが、進展はなかった。これについては、次年度に持ち越すが、コロナの影響で実施の目途は立っていない。 一方、前年度までの結果で、―― 50 T程度の磁場でも反強磁性転移温度が変化しないRu2CrSiの反強磁性について、Ru1.9Fe0.1CrSiでの強磁場中でのスピングラスの性質について、Ru1.9Fe0.1CrSiの奇妙な磁気抵抗のヒステリシスについて、Ru2CrSiの反強磁性とRu1.9Fe0.1CrSiのスピングラスの関連について――、これらの実験的な結果とその解釈・議論を主な内容とした論文が完成し、専門誌に掲載された。この論文で示した主なことを以下にあげる。Ru2CrSiは、反強磁性転移温度が13 Kで、通常の局在磁気モーメントによる反強磁性であれば、10 T以上の磁場で反強磁性が破壊されるはずであるが、50 Tを越える磁場でもその兆候が全く見られない特異な反強磁性であることを、高磁場中の磁化、磁気抵抗、比熱、およびmuSRの測定から明らかにした。 また、Ru1.9Fe0.1CrSiでは、磁気抵抗に奇妙なヒステリシスが見られることを明らかにした。そのヒステリシスは、そこでの状態である強い不可逆性を持ったスピングラスが関係することを示した。特に、パルス磁場下で、大きく奇妙なヒステリシスが起きる。これは、パルス磁場という特別な環境下での、見かけ上の奇妙さかもしれないが、強い不可逆性に関係していることは間違いなく、興味深い現象と考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナの影響により、実験的研究は実質的にほとんどできず、進捗はなかった。成果発表を考えていた国際学会も今年度は開催されなかった。また、大学での授業などの対応に多くの時間を取られたため、研究成果のまとめ、発表についてもやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
Fe3-xMnxSiの複数の反強磁性転移についての、磁場中磁気相図のxによる変化を詳しく調べるため、磁化測定などを共同利用により行いたいと考えているが、現時点ではコロナの影響によってできなくなる可能性がある。 そのため、この研究課題としては、おもに着手している論文をまとめ、掲載されることに注力したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響により、今年度は論文をまとめること以外のことはできなかった。 今年度もコロナの状況によるが、Fe3-xMnxSiについての補充実験や、成果についての学会発表、論文発表のために使用したいと考えている。
|