研究課題
本年度おもに研究対象にしたホイスラー化合物Fe3-xMnxSi(0.75 < x < 1.7)では、強磁性転移が起き(転移温度TC)、さらに低温で強磁性成分を持った反強磁性的相への転移(この反強磁性的相をAF相、転移温度をTA、と呼ぶ)が起きることが従来から知られていた。本研究において、前年度までに行った磁化と比熱の測定により、x = 1.7の試料では、これら2つの転移に加え、さらに低温で新たな反強磁性転移があることを見出した(この反強磁性的相をAF2相、転移温度をTA2、と呼ぶ。なお、TC > TA > TA2 である)。本年度にかけて、x = 1.7での磁気転移への圧力効果を調べた。圧力を印加することによってTCは減少し、TAに近づき1GPa付近の圧力で消失することが分かった。TAはあまり圧力に依存しないが、TA2は圧力下で増加し、TA に近づいていく。AF2―AF相転移(TA2での転移にあたる)は磁場―温度相図上で、高温高磁場側にシフトしてAF2相の領域が広がる。また、TCが消える圧力以上では、零磁場ではAF相は存在せず、常磁性相からAF2相への転移が起きると考えられる。この圧力による磁気転移・相図の変化は、Mn量xを増加した時の変化に類似している。Mn量xを増加した時は、格子定数は増加するので、この磁気相図の変化は単に格子定数の変化では説明できない。また、この物質ではある程度大きい正負の磁気熱量効果が観測されるので、磁化のデータの解析を行い、その大きさを評価した。本年度は、これまでに行ってきたx = 1.7付近の試料の磁気転移への圧力効果の研究結果を国際学会で発表し、論文としてまとめた。また、メスバウアー分光の実験も行ってきており、TC以下(TA2も含め)の温度で内部磁場が存在することを確かめた。この結果も国際学会で発表し、論文としてまとめた。
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AIP Advances
巻: 13 ページ: 025116 (5 pp.)
10.1063/9.0000584
the proceedings of LT29
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