研究実績の概要 |
今年度は、Fe-Co-B-Si-Nb合金のNbをDy, Nd, Smで置換し、ガラス形成能や飽和磁化への影響について調査を行った。これらの希土類(RE)元素の原子半径、および他の構成元素に対する混合熱は、過去に研究したYとほぼ同じである。しかしFe-RE系の平衡状態図は、DyはYと類似している(高Fe濃度側に複数の共晶点を有し、またFe23RE6相が安定相として存在する)が、Nd, SmはYと類似していない(高Fe濃度側には共晶点は無く、Fe23RE6相も存在しない)。 ガラス遷移の有無、および過冷却液体領域の広さ(ガラス遷移温度と結晶化温度の温度差)で判断したガラス形成能は、Y = Dy > Nd > Smの順に向上することが分かった。すなわち、高Fe濃度側に複数の共晶点を有すること、またはFe23RE6相が安定相として存在することが、本合金系のガラス形成能と密接に関係していることが示唆された。Fe基金属ガラスにおいては局所構造が準安定なFe23B6相に類似していること、およびFe23RE6相はFe23B6相と構造が似ていることから、YまたはDyを添加することでガラス相の局所構造が変化した可能性が考えられる。しかし、Y, Dyを添加した合金は高いガラス形成能を有するが、薄帯試料の表面結晶化が防げないことが明らかとなった。これは、合金中に少量含まれるRE酸化物の影響によるものと考えられる。 また、Nd, Smではガラス形成能向上の効果は小さいものの、飽和磁化を大きく向上させることが分かった。これは、Nd, Smの磁気モーメントがFe, Coと強磁性的に結合するためであると考えられる。またSmを添加した場合はガラス遷移が得られにくいが、Smの酸化物(単斜晶)はbcc-Fe相の核生成サイトになり難いため、比較的容易にアモルファス単相薄帯が得られることを確認した。
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