研究課題/領域番号 |
17K06778
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研究機関 | 鶴岡工業高等専門学校 |
研究代表者 |
安田 新 鶴岡工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (20708440)
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研究分担者 |
佐々木 哲朗 静岡大学, 電子工学研究所, 特任教授 (20321630)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 超伝導体 / テラヘルツ分光 / YBCO / GBCO |
研究実績の概要 |
本研究はテラヘルツ分光で超伝導現象発現メカニズムを解明することを究極的な目的としている.申請者らはYBCOに代表される銅酸化物超伝導体の物性・結晶構造からテラヘルツ分光により高温超伝導の発現機構の知見を得られると予想した.予備実験で転移温度前後である特定の周波数範囲でのみYBCOのテラヘルツ吸収スペクトルピークが存在し,2.5 THz以上の周波数でのみ選択的にシフトする特異な現象が起こることを申請者が初めて明らかにした.この現象を手掛かりに極低温(~12K)から0.1℃刻みで詳細にテラヘルツ吸収スペクトルおよびピークの変化を測定し,その解析を行えば超伝導の発現メカニズムを特定できると予想した.そして,超伝導の転移温度を上昇させる有力な知見となり,この分野の画期的な発展に寄与できると考えられる. 平成29年度は極低温冷却装置の選定および購入・導入を行った.また一方で,安田研究室にてセラミック管状炉を自作し,いくつかの焼成条件を変えたYBCO超伝導体サンプルの作製を行い,X線回折・ラマン分光法などでその形成の確認を行ったところである.単結晶が得やすいGdを用いたGBCO単結晶サンプルについても同様に準備中である.バルク単結晶だけでなく,固有の特異な物性を示す可能性のある薄膜としてのYBCO結晶の作製について溶媒としてアミノエタノールを用いたスピンコート法という簡便な方法で作製し,X線回折などでその薄膜の成長を確認した.また国内学会および国際学会での発表をそれぞれ1件ずつ行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度はサンプルの作製および極低温冷却装置の導入まで行うことができたが,テラヘルツ分光測定について遅れが生じている.理由としては超伝導体及びテラヘルツ分光測定用極低温冷却機の学内の委員会の設置や各会議,購入のプロセス,業者選定およびその依頼に予想をはるかに上回る時間がかかったことがあげられる.装置の搬入が大きくずれ込み,予定よりも4カ月程度遅い2018年3月の搬入ということになったのが遅延の大きな理由の一つである.装置の構成及び学生の指導などで各種作製条件を変更させた超伝導体のサンプルの作製に多くの時間を割くこととなり,テラヘルツ分光測定などの準備の方はできていたがテラヘルツ分光測定までなかなか至らなかった.
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今後の研究の推進方策 |
今年度はサンプルの準備はできている状態であるので速やかに転移温度付近における0.1℃刻みの詳細なテラヘルツ分光スペクトルの測定温度依存性についての調査を行う.その結果から,申請書の計画通り,起きている物理現象の予想を行う.その後,その予想した現象について異なる視点からの評価をしてその裏付けを行う.結晶構造の変化や相転移の調査法として結晶のX線(XRD)による構造解析があげられるが,X線回折の温度依存性の測定を業者(Panalytical社)に委託もしくは他機関にて行う予定である.また,サンプルの電気的特性の調査は超伝導体としての特性を確認するために重要であるが,昨年度購入した極低温冷却機を用いて申請者および学生が測定する.超伝導体への電極形成はInを使用して簡単に行える.(a)で準備した試料について,四端子法による電流電圧特性(I-V特性)の測定を行う.超伝導の転移は非常に急峻に変化するので,外観の確認には本校が所有する走査型電子顕微鏡(SEM)を利用する.さらに緻密な構造調査のために,本校に導入された透過型電子顕微鏡(TEM)の利用も検討する.また必要に応じて,比較のため従来の赤外透過スペクトル測定(FT-IR)やラマン分光も業者委託ないしは他機関(山形工業技術センター)にて行っていく予定である.
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