研究実績の概要 |
研究代表者は、第一原理バンド計算FLAPW法を活かしてFLAPW-Fourier理論を発展させ、遷移金属化合物も含めて1原子あたりの遍歴電子数e/aに関する統一した体系を確立してきた.これは逆格子空間での産物であり、平均化した一定の電荷分布を前提とする.しかし、現実には構成元素の個性により電荷密度分布は濃度差を呈する.実空間で定義される電子濃度変数に価数がある.これを構成元素毎の電荷量として定義し、構成元素毎の価数を評価した. 2017年度は、元素単体として個性の異なるNa, Si, V, Fe, Cuを選びこれらの元素を使って電荷密度分布を求めた.さらに、電荷移動が顕著な化合物NaTlとAlFe (cP2)を選び、e/aと価数の同時評価を試み、電気陰性度の小さい元素から大きい元素に電荷移動が生ずることを示した.. 2018年度は、初年度の計画を発展させて、やはり電荷移動が顕著と期待されるP化合物を選択しe/aと価数の関係を調査した.例えば、PSc (cF8)について電荷密度分布を計算し、いずれも電気陰性度が小さいSc原子からその値がより大きいP原子に向けて大きな電荷移動が観察し、Scの価数は単体における値3より低下し2.5価、一方、Pの価数はその単体の値5より増加して5.5価となった.その平均値4.0は逆格子空間で求まるe/a=4.15と整合した. 2019年度は、逆格子空間と実空間のそれぞれで展開した金属電子論を駆使して、Hume-Rothery電子濃度則に及ぼす共有結合性とイオン結合性の影響をelectrochemicalな指標として電荷移動を取り込み遷移金属及び希土類を含む金属間化合物群を対象に展開した.その成果は日本金属学会で公表し、さらにProgress in Materials Scienceに寄稿した.
|