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2017 年度 実施状況報告書

保磁力の配向度依存性と角度依存性の相関による磁化反転プロセスの解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K06781
研究機関公益財団法人応用科学研究所

研究代表者

松浦 裕  公益財団法人応用科学研究所, その他部局等, 特別研究員 (90787392)

研究分担者 長村 光造  公益財団法人応用科学研究所, その他部局等, 理事・特別研究員 (50026209)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード磁石 / Nd-Fe-B焼結磁石 / 保磁力 / 配向度 / 保磁力メカニズム
研究実績の概要

Nd-Fe-B焼結磁石およびフェライト磁石の保磁力は磁石の配向度(Br/Js, Brは残留磁束密度、Jsは飽和磁束密度を示す。)の向上とともに減少することが知られている。この現象は保磁力の角度依存性と同様に、これら磁石の保磁力メカニズムから生じていることが推定される。
今回、Nd-Fe-B焼結磁石の保磁力配向度依存性および保磁力角度依存性の温度変化について調査を行い、両者の間の相互の関係から温度変化した時のNd-FeB焼結磁石の磁化反転メカニズムについて考察を行った。Nd-Fe-B焼結磁石の保磁力の配向度依存性は温度の上昇とともに全ての粒子が独立して磁壁移動により磁化反転が進むとして求めた曲線に近づくことを示した。また保磁力の角度依存性の温度変化も、温度が上昇するに従い全ての粒子が独立して磁化反転すると仮定して求めた保磁力の角度依存性に近づくことを示した。
これらの事実から、配向したNd-Fe-B磁石の保磁力は磁壁が配向方向から倒れた結晶にピンニングされており、ピンニングが外れると複数の結晶を飛び越え移動することで決定される。すなわち、結晶は集合体で磁化反転が進むことを示しており、集合体の大きさは温度とともに小さくなることを示している。このことは磁壁をピンニングしている配向方向から倒れた結晶粒角度が温度上昇とともに小さくなることを示唆している。
結晶の配向分布がガウス分布していることを考えると、配向方向から倒れる角度が小さくなると結晶の数は増大する。したがって、温度上昇とともに、磁壁をピンニングしている結晶の数すなわち反転が起こる場所は増大する。
以上のことからNd-Fe-B焼結磁石では温度上昇とともに磁壁の飛びによる磁化反転の大きさは小さくなり、磁化反転が起こる場所が増大する。今回の研究により、従来と異なる保磁力メカニズムの描像を描くことが出来た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Nd-Fe-B焼結磁石の保磁力の配向度依存性および保磁力角度依存性が相互に関係していることが明らかとなった。今回の実験結果およびその考察から、配向磁石の保磁力メカニズムは従来言われていた磁化の一斉回転による磁化反転機構や熱揺らぎによるニュークリエーションによる磁化反転機構とは異なる機構で磁化反転が進むことが明らかとなった。すなわち、配向したNd-Fe-B焼結磁石では磁壁のピンニング、デ・ピンニングによる磁壁の飛びにより複数の粒子が同時に磁化反転することにより説明される。また保磁力の配向度依存性および保磁力の角度依存性の温度変化の調査から温度の上昇とともに磁化反転する複数の結晶からなる二次粒子の大きさが変化していることが推定されている。これらの事実はこれまでに報告されたことがなく、今回の研究の新たな成果である。

今後の研究の推進方策

これまでに得られた保磁力の配向度依存性から、フェライト磁石においてもNd-Fe-B焼結磁石と同様に保磁力は配向度とともに減少することが分かっている。Nd-Fe-B焼結磁石と同じ手法により、フェライト磁石の保磁力の配向度依存性から得られたデータを用いて保磁力角度依存性を求め、実験で得られた保磁力の角度依存性のデータと比較を行う。Nd-Fe-B焼結磁石で用いた解析手法がフェライト磁石でも使えることを示すことにより、用いた手法と保磁力メカニズムの描像の正しさについて確認を行う。また、これらデータを解析を通してNd-Fe-B焼結磁石およびフェライト磁石の、保磁力発生のメカニズムの構築を行う。
同時にSPring-8のX線MCD法および中性子回折を用い磁化反転の様相を観察し、磁化測定から得られた保磁力メカニズムとの整合性について検証を行う。

次年度使用額が生じた理由

一部研究計画を翌年に持ち越したため。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Augular Dependence of Coercivity Derived from Alignment Dependence of Coercivity in Nd-Fe-B Sintered Magnets2018

    • 著者名/発表者名
      Yutaka Matsuura, Tetsuya Nakamura, Kazushi Sumitani, Kentaro Kajiwara, Ryuji Tamura, Kozo Osamura
    • 雑誌名

      AIP Advances

      巻: ー ページ: ー

    • DOI

      10. 1063 / 1. 4985740

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Angular Dependence of Coercivity in Isotropically Aligned Nd-Fe-B Sintered Magnets2018

    • 著者名/発表者名
      Yutaka Matsuura, Tetsuya Nakamura, Kazushi Sumitani, Kentaro Kajiwara, Ryuji Tamura, Kozo Osamura
    • 雑誌名

      AIP Advances

      巻: ー ページ: ー

    • DOI

      10. 1063 / 1. 5005040

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Nd-Fe-B焼結磁石の保磁力配向度依存性から導かれる保磁力メカニズム2017

    • 著者名/発表者名
      松浦 裕
    • 雑誌名

      電気学会 マグネティクス研究会

      巻: MAG-17-094 ページ: 43, 46

  • [雑誌論文] Nd-Fe-B焼結磁石の保磁力の温度依存性から得られる磁化反転挙動2017

    • 著者名/発表者名
      松浦 裕
    • 雑誌名

      電気学会 マグネティクス研究会

      巻: MAG-17-234 ページ: 25, 30

  • [学会発表] SrO・6Fe2O3フェライト磁石の磁化反転メカニズムについて2018

    • 著者名/発表者名
      松浦 裕
    • 学会等名
      日本金属学会2018年春季(第162回)講演大会
  • [学会発表] Angular Dependence of Coercivity in Isotropically Aligned Nd-Fe-B Sintered Magnets2017

    • 著者名/発表者名
      Y. Matsuura, T. Nakamura, K. Sumitani, K. Kajiwara, Ryuji Tamura, K. Osamura,
    • 学会等名
      62nd Annual Conference on Magnetism and Magnetic Materials (MMM 2017)
    • 国際学会
  • [学会発表] Angular Dependence of Coercivity Derived from Alignment Dependence of Coercivity in Sintered Nd-Fe-B Magnets2017

    • 著者名/発表者名
      Y. Matsuura, T. Nakamura, K. Sumitani, K. Kajiwara, Ryuji Tamura, K. Osamura
    • 学会等名
      第41回日本磁気学会学術講演会

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公開日: 2018-12-17  

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