研究実績の概要 |
これまでNd-(Dy)-Fe-B焼結磁石およびフェライト磁石の保磁力の配向度依存性(ALDC)の関係から保磁力の角度依存性(ANDC)との関係について調べてきた。これら磁石は配向度の向上と共に保磁力が減少することから、磁化反転は磁化の一斉回転ではなく、磁壁移動により進むことが示唆されている。これら磁石のALDCとANDCは保磁力メカニズの別側面であることが推定される。 我々は保磁力のALDCから得られた結果を用い、磁化反転領域角度(θ1)を用いANDCを求めると、これら磁石の低角度側のANDCを説明できることを述べてきた。一方、フェライト磁石のANDCでは磁界との角度が0°から一旦減少し、40°以上で増加することから、磁化の一斉回転で予想されるようなANDCを示す。しかし、θ1から求めたフェライト磁石のANDCは低角度側の保磁力減少を説明でき、この磁石の保磁力も磁壁移動で説明できる。 これらの事実を更に積み重ねるため、Ga添加Nd-Fe-B焼結磁石のALDCおよびANDCを調査し、フェライト磁石と比較した。Ga添加Nd-Fe-B焼結磁石の保磁力のALDCとANDCから得られたθ1から,この磁石においても保磁力は等方性磁石から減少していることが分かった。ただし、その減少量はNd-(Dy)-Fe-B焼結磁石より少なくフェライト磁石に近いことを示した。 配向度(α)=0.945の磁石のθ1の値は41.7°でフェライト磁石の40.7°より大きくなっていることが分かった。これから予想される保磁力の角度依存性はフェライト磁石と同じく0°から低下するANDCを示した。 Ga添加Nd-Fe-B焼結磁石とフェライト磁石のALDCから得られたθ1から予想されるように、Ga添加磁石のANDCはフェライト磁石と似た傾向を示した。これらの事実はNd-Fe-B焼結磁石とフェライト磁石は磁壁移動で決定される。
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