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2019 年度 実施状況報告書

新規な電圧駆動型の高性能磁気光学素子の実現に向けた高機能強磁性・強誘電薄膜の作製

研究課題

研究課題/領域番号 17K06784
研究機関秋田大学

研究代表者

吉村 哲  秋田大学, 理工学研究科, 教授 (40419429)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード強磁性強誘電薄膜 / 磁気Kerr効果 / 電界印加磁化反転
研究実績の概要

本研究では、強磁性・強誘電薄膜を、ホログラフィ方式を実現する空間光変調器の素子における光変調層に新規に適応して、空間光変調器の素子を電界駆動化および超微細化することで、超低消費電力・高精細な立体テレビを実現することを最終目的とし、磁気Kerr効果の大きい強磁性・強誘電薄膜を探索する。
これまでの検討において、(Bi,La)(Fe,Co)O3薄膜における磁気Kerr回転角は最大で2°を超える極めて大きな値が得られたが、膜厚やレーザ波長に対して大きな依存性があり、実用性に難があった。よって、提案書に記載した、強磁性・強誘電薄膜の電界印加による磁化反転をその上に積層された強磁性金属薄膜の磁化に転写する方法の検討において、消磁状態からある程度磁化した状態に変化したことが判った。
令和元年度においては、この磁化反転割合を、磁気力顕微鏡像のラインプロファイルから詳細に評価した結果、下向きに磁化していた磁区の75%程度が上向きに磁化反転した、つまり、電界印加により強磁性金属薄膜の磁化が75%程度磁気転写されたことが判った。この磁化反転割合を更に増大させるためには、より大きな磁化を有する強磁性・強誘電薄膜が必要となることから、GdやNdでの置換を行った。更に、Feに対するCo置換に効果についても検討した。その結果、飽和磁化は、(Bi,La)(Fe,Co)O3薄膜では70 emu/ccであったが、(Bi,Gd)(Fe,Co)O3薄膜では80 emu/cc、(Bi,Nd)(Fe,Co)O3薄膜では120 emu/cc、となった。また、Feに対する25 at%程度のCo置換において飽和磁化は50 emu/cc程度増大することも判った。よって、今回作製した(Bi,Nd)(Fe,Co)O3薄膜を用いることにより、磁気Kerr効果の大きな磁性薄膜の電界印加磁気転写の実現が大いに期待できる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度目から2年度目にかけて、磁気Kerr効果の大きい強磁性・強誘電薄膜を探索することを計画し、「反応性パルスDCスパッタリング法」で作製した(Bi,La)(Fe,Co)O3強磁性・強誘電薄膜において、膜厚やレーザ波長によって変化はあるものの、最大で、目標とする磁気Kerr回転角度0.1倍の20倍以上の値が得られた。また、平成30年度後半に実施予定であった、「電気磁気効果測定装置」の改良(高分解能化・高感度化・高印加電圧化)に向けた取り組みについて、電界印加に対する磁化(磁気Kerr効果)の変化を、少々ノイズが多いながら検出することにも成功した。令和元年度に実施予定であった「高飽和磁化の強磁性・強誘電薄膜の作製」について、準安定相であるε構造を有する(作製が困難であると予想された)Fe2O3薄膜の作製に着手することなく、これまで検討してきたBiFeO3系薄膜における元素置換において、ε構造のFe2O3薄膜と同程度の飽和磁化を有する(Bi,Nd)(Fe,Co)O3薄膜の作製に成功した。そして、オプション検討であった、電界印加による強磁性金属薄膜の磁化反転(磁気転写)についても、定量評価を行いその実証を示すことに成功し、かつ本方式に有用な高い飽和磁化を有する薄膜の作製にも成功した。

今後の研究の推進方策

今回、研究期間を延長したが、その主な理由は以下の通りである。11月に投稿した論文の査読が想定より数カ月遅れて届いたこと、査読結果が届いたころにコロナウィルスの影響で大学機能が停止して査読で指摘された追加実験を行うことができなかったことから、令和2年度に、追加実験を行い(消耗品の購入等が必要)、論文の採択を目指す(論文投稿料が発生)。また、本研究成果について、共同研究や連携している機関と、今後の展開に関する打合せを行いたいと打診したが、すぐには先方の都合がつかず、打合せの日程が確定する直前にコロナウィルスの影響で出張の自粛が求められ、年度内に打合せができなかった。令和2年度に、本打合せを延期する(旅費が発生)。
上記の理由で期間を1年延長したので、この期間に以下の検討も合わせて行う。「高飽和磁化の強磁性・強誘電薄膜の作製」が可能になり、「電界印加による強磁性金属薄膜の磁化反転(磁気転写)」も実現したことから、計画書ではオプション検討(提案のみ)であった、大きな磁気カー回転角度を有するGd-Feの作製と、それを高飽和磁化の強磁性・強誘電薄膜の上に成膜した積層膜において、電界印加磁気転写を行うことにより、本研究の発展系として将来的に検討を行う予定の「電界印加による磁気Kerr効果の局所制御」に関する予備検討を行う。

次年度使用額が生じた理由

11月に投稿した論文の査読が想定より数カ月遅れて届いたこと、査読結果が届いたころにコロナウィルスの影響で大学機能が停止して査読で指摘された追加実験を行うことができなかったことから、令和2年度に、追加実験を行い(消耗品の購入等が必要)、論文の採択を目指す(論文投稿料が発生)。
本研究成果について、共同研究や連携している機関と、今後の展開に関する打合せを行いたいと打診したが、すぐには先方の都合がつかず、打合せの日程が確定する直前にコロナウィルスの影響で出張の自粛が求められ、年度内に打合せができなかった。令和2年度に、本打合せを延期する(旅費が発生)。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件)

  • [国際共同研究] VIT大学(インド)

    • 国名
      インド
    • 外国機関名
      VIT大学
  • [国際共同研究] 台湾国立彰化師範大学(その他の国・地域)

    • 国名
      その他の国・地域
    • 外国機関名
      台湾国立彰化師範大学
  • [雑誌論文] BiFeO3系強磁性・強誘電薄膜の記録・映像デバイス応用への試み-薄膜の高品位作製および材料探索から機能検証まで-(招待原稿)2019

    • 著者名/発表者名
      吉村 哲,M. Kuppan
    • 雑誌名

      映像情報メディア学会技術報告

      巻: 43-15 ページ: 37-43

  • [雑誌論文] Development of novel magnetic recording device driven by electric field using BiFeO3-based ferromagnetic and ferroelectric thin films(招待原稿)2019

    • 著者名/発表者名
      Satoru Yoshimura
    • 雑誌名

      Conference Proceedings of 2019 Global Research Efforts on Energy and Nanomaterials (GREEN 2019)

      巻: 1 ページ: ID-02

  • [学会発表] (Bi,La)(Fe,Co)O3強磁性強誘電薄膜上に成膜された[Co/Pd]垂直磁化膜における積層膜への電界印加による[Co/Pd]薄膜の磁化反転2020

    • 著者名/発表者名
      吉村哲,大下直哉,M. Kuppan
    • 学会等名
      応用物理学会新領域 強的秩序G 第10回研究会
  • [学会発表] 強磁性・強誘電薄膜の磁区・分域構造観察に適した高感度な磁気・電気力顕微鏡探針の作製2020

    • 著者名/発表者名
      細谷亮太,吉村哲
    • 学会等名
      応用物理学会新領域 強的秩序G 第10回研究会
  • [学会発表] 反応性パルスDCスパッタリング成膜におけるBiFeO3系強磁性・強誘電薄膜の高品位作製の指針2020

    • 著者名/発表者名
      武田航太朗,吉村哲
    • 学会等名
      応用物理学会新領域 強的秩序G 第10回研究会
  • [学会発表] Attempt of application to memory or display devices in BiFeO3-based multiferroic films - Fabrication of high-qualified films, material research, and functional verification2019

    • 著者名/発表者名
      S. Yoshimura, M. Kuppan
    • 学会等名
      The 2nd World Summit on Advances in Science, Engineering and Technology (Indiana Summit-2019)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Trial to application of BiFeO3-based multiferroic films to new magnetic memory devices - Material research, fabrication of high-qualified films, and functional verification2019

    • 著者名/発表者名
      S. Yoshimura, M. Kuppan
    • 学会等名
      19th International Conference on Science, Engineering & Technology (ICSET 2019)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Development of novel magnetic recording device driven by electric field using BiFeO3-based ferromagnetic and ferroelectric thin films2019

    • 著者名/発表者名
      S. Yoshimura
    • 学会等名
      2019 Global Research Efforts on Energy and Nanomaterials (GREEN 2019)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] BiFeO3系強磁性・強誘電薄膜の記録・映像デバイス応用への試み~薄膜の高品位作製および材料探索から機能検証まで~2019

    • 著者名/発表者名
      吉村哲,M. Kuppan
    • 学会等名
      映像情報メディア学会研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] Magnetization reversal of [Co/Pd] perpendicular magnetic film fabricated onto (Bi,La)(Fe,Co)O3 multiferroic film by applying electric field to multiferroic / magnetic laminated film2019

    • 著者名/発表者名
      S. Yoshimura, N. Oshita, M. Kuppan
    • 学会等名
      64th Annual Conference on Magnetism and Magnetic Materials (MMM 2019)
    • 国際学会
  • [学会発表] 強磁性・強誘電/強磁性金属積層膜への電界印加による強磁性金属薄膜の磁化反転2019

    • 著者名/発表者名
      吉村哲,大下直哉,M. Kuppan
    • 学会等名
      第43回日本磁気学会学術講演会
  • [学会発表] 反応性パルスDCスパッタリング成膜におけるターゲット中酸素濃度がBiFeO3系薄膜の磁気・誘電特性へ及ぼす影響2019

    • 著者名/発表者名
      山本大地,吉村哲
    • 学会等名
      第43回日本磁気学会学術講演会
  • [学会発表] 反応性パルスDCスパッタリング成膜におけるBiFeO3系強磁性・強誘電薄膜の高品位作製の指針2019

    • 著者名/発表者名
      武田航太朗,吉村哲
    • 学会等名
      第43回日本磁気学会学術講演会

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公開日: 2021-01-27  

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