研究実績の概要 |
本研究では、強磁性・強誘電薄膜を空間光変調素子における光変調層に新規に適応して、電界駆動化および超微細化することで、超低消費電力・高精細な立体テレビを実現することを最終目的とし、磁気Kerr効果の大きい強磁性・強誘電薄膜を探索した。 本研究を開始する前まで、(Bi,Ba)FeO3 強磁性・強誘電薄膜を、新しい「反応性パルスDCスパッタリング法」を用いて高品位に作製し、90 emu/cm3の飽和磁化が得られていたが、デバイス応用に適していない膜面内磁化で、かつ磁気Kerr回転角も0.001°程度と非常に小さく、空間光変調素子には適していなかった。 本研究では、まず、Biの置換元素としてランタノイドに着目し、Feの置換元素としてCoも用いた、(Bi,La)(Fe,Co)O3の作製に新たに取り組んだ。その結果、飽和磁化は70 emu/cm3程度と大きくはなかったが、垂直磁気異方性、最大で2°を超える磁気Kerr回転角、が得られた。ただし、大きな値が得られるのは特定の波長のみであり、可視光用空間光変調素子の実現には不向きであった。 この問題を解決するために、本薄膜への電界印加による磁化反転を介して、その上に積層した磁気Kerr効果が安定的に大きい金属磁性薄膜を磁化反転させる手法、「電界印加磁気転写」を検討した。[Co/Pd]nを3μm径のドットに微細加工して(Bi,La)(Fe,Co)O3上に配置し、電界を印加する前と後の[Co/Pd]nの磁区構造を比較した結果、消磁状態から磁化状態に変化した。これにより、電界駆動化の実現性を示すことができた。 更に、単膜型でも電界印加磁気転写用の積層型でも有効な材料の探索も行った。その結果、(Bi,Nd)(Fe,Co)O3において、垂直磁気異方性、140 emu/cm3程度の飽和磁化、安定的に0.3°程度の磁気Kerr回転角、が得られた。
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