研究課題/領域番号 |
17K06788
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
太田 寛人 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任助教 (60546985)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | サブナノシート磁石 / 固相反応法 / 溶液反応法 |
研究実績の概要 |
今年度は第I段階「サブナノシート磁石を有する化合物の系統的大規模探索」を実施した。このテーマは (i) 固相反応法による探索、(ii) ソフト化学による探索から成っており、それぞれに関して以下のように研究が進捗した。 (i) CoPn層(Pn=P,As)を含む層状化合物を固相反応法を用いて探索した。一連のホモロガス相に族する物質としては、Sr2ScO3CoAsのSrをBaに置き換えると、粉末X線回折のパターンが異なる結果が得られ、積層方法が異なる新たな構造が得られたと考えられる。これはCoAs層間距離がさらに大きい物質と予想され、構造解析が重要となる。また、ACoPnに関しては、これまでにLiCoAsが得られており、その構造が過去の文献で説明できることを明らかにした。ただ収率が低く、(ii)の溶液反応を実施するには、合成方法の最適が必要である。NaCoAsの合成に関しては、Naの昇華による反応空間からの離脱を抑制することが重要であることが明らかになってきた。 (ii) Sr2ScO3CoAs に関して、室温における溶液反応を試みた。Sr2ScO3CoAs に関しては、純水に浸し数日保持することで構造の変化が確認できた。粉末X線回折測定の結果、CoAsと思われるパターンが得られており、一部は分解したと考えられる。ただし、いずれのピークも幅が広く、構造にかなり乱れがあるか粒径が著しく小さいと考えられる。これとは別にCoAs伝導層が単離させている可能性も考えられ、今後分析が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
溶液反応に用いる物質は固相反応法により合成するが、当初予定していた物質の一部(LiCoAs)で準備が順調では無い。また、固相反応による物質探索に関しても、当初の予想より進捗していない。これらの点が、やや遅れていると判断して主要な理由である。ただし、合成の困難さは当初の予想の範囲内であると感じており、また、合成条件は確実に絞られているため、研究は着実に進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の進捗の遅れをふまえつつ、実施計画の次年度の計画に従って研究を進める。もともと次年度も初年度の内容を継続することが計画されており、遅れを取り戻すべく物質探索の比重を増やして実施する。特にACoO2などの層状酸化物の合成およびソフト化学による準安定相の探索を重点的に行う。 次年度の主要テーマである「新規層状磁石への機能付加・高機能化」は、(i) 局在磁気モーメントの挿入と(ii) 圧力誘起相転移を示す層状磁石の探索に分かれている。(i) では、CoPn層を有するホモロガス層の物質に関して、層間への磁気モーメントの導入を実施していく。具体的にはScのTiやV, Cr への置き換えを想定している。また、ACoPnやACo2Pn2の探索も重点的に行い、Aとして磁性元素の導入を目指す。(ii) では、圧力印加状態の物性測定を行う。特にACo2Pn2は圧力敏感な構造であるため、ACo2Pn2を中心に、探索によって得られた新規物質に対して、圧力印加による構造や物性への影響を調べていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 主な理由として、物質合成の進捗が若干遅れたことにより、物性測定に必要な寒剤の使用量が当初の見込みより少なかった点が挙げられる。他に、物質合成に必要な高純度試薬が想定より少なくて済んだため、購入代金が当初の見込みを若干下回った点が挙げられる。 (使用計画) 上記理由により発生した次年度使用額は、次年度の最初から切れ目なく研究を実行するために使用する。具体的な使用計画は、不活性ガス雰囲気用のアルゴンガスの購入や単結晶育成に使用するビスマス原料の購入、および研究を切れ目なく遂行するために必要な消耗品の購入である。
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