高純度酸化ガリウム粉末およびこれにチタニアをドープした焼成体を作製し、電気伝導度の酸素分圧依存性を700-900℃、酸素分圧を1気圧から10の-20乗気圧までの範囲で測定した。1500℃焼成体の相対密度は約65%であり、雰囲気の酸素分圧が試料表面で反応するための多孔性を保っていることが確認された。電導度の酸素分圧依存性からn型の酸化物半導体の性質が確認された。酸素分圧が10の-5乗より高い雰囲気では電導度は酸素分圧の約-0.22乗に比例した。この傾きは2価にイオン化した格子間ガリウムイオンの存在で導かれる依存性、-1/4乗に比例する、とほぼ同じである。酸素分圧が10の-5乗より低い雰囲気では依存性は小さくなり、酸素分圧の約-0.10~-0.13乗に比例した。この傾きの説明は困難であった。また複数の格子欠陥が存在して酸素分圧に応じてどちらかが優勢になる、と言うことでは依存性の変化は説明できず、この酸素分圧で欠陥が変化すると考えることが実験結果を良く説明する。 酸素分圧を変化させたときの電導度の変化は最初急であり、その後にゆっくりした変化が続く。これは雰囲気の影響が試料表面に拡散によって現れるとして計算したときとは異なる変化であり、何らかの欠陥の移動や集合を伴う変化であることが示された。また900℃で実験を行うと特に低酸素分圧で酸化ガリウムの分解が優勢となり、一度低酸素分圧で測定した後に高い酸素分圧に戻しても、元の値には戻らなかった。 実験後の試料を透過型電子顕微鏡で観察すると、C軸方向から電子線を入射した場合典型的な刃状転移が観察された。これは(100)面の1/4に相当する半面が挿入・削除されたことに相当している。転位密度は激しく加工硬化させた金属並みに大きく、1cm2あたり10の12乗程度であった。転位の様な線欠陥による伝導電子の生成も重要であることが示された。
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