研究課題/領域番号 |
17K06798
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
菊池 丈幸 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (50316048)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マルチフェロイクス / ヘキサフェライト |
研究実績の概要 |
本申請研究では,多値メモリや様々なセンサデバイスへの応用が期待されている種々の室温マルチフェロイックフェライトについて,電場-磁場間の相互干渉を最小化することで複素誘電率と複素透磁率の個別精密測定が可能な矩形導波管空洞共振器を用いた共振器摂動法による材料定数(複素誘電率および複素透磁率)の精密評価を実施し,誘電率と透磁率の周波数依存性をそれぞれ個別に測定,比較することで,電磁気デバイス応用において重要であるにもかかわらず,いまだ解明されていない室温マルチフェロイックフェライトの高周波帯域における電気-磁気結合について明らかにし,それらの高速デバイス化の可能性を探索することを目的として研究を実施した.H30年度はSr3Co2Fe24O41 を対象物質として,泥しょう鋳込み法を用いて長尺棒状フェライト焼結体の作製を試みた.フェライトの合成は錯体重合法を用い,スラリーの作製条件(粉体割合,分散剤・バインダーの種類,添加量,添加方法)を検討することで,フェライト粉末の泥しょう鋳込みに適した低粘度スラリーの作製を試みた.その結果,一般的なセラミックスにおける分散媒-粉体割合と比較して極端に低い粉体割合で,泥しょう鋳込みが可能なスラリーを作製することができた.多孔質アルミナとシリコーンゴムを用いて作製した棒状試料作製用の鋳型を用いて長尺棒状試料の作製を試み結果,矩形導波管空洞共振器にセット可能な棒状焼結体試料(長さ130 mm×太さ 1.2 mm□)を得ることが出来た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,矩形導波管空洞共振器を用いた共振器摂動法による材料定数測定のために長尺のフェライト焼結体試料が必要となるため,泥しょう鋳こみ法による長尺焼結体試料の作製を計画したが,フェライトの磁性に由来すると考えられる粉体凝集とチクソトロピーの発現により,通常のセラミックスのような高い粉体割合では泥しょう鋳込みに適した低粘度スラリーを得ることが出来なかった.そこで,スラリーの調製条件を見直し,再現性良く長尺の棒状焼結体試料を作製できるスラリー条件の検討が必要となったため,全体計画からの遅れが生じている.
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今後の研究の推進方策 |
磁場印加による配向処理については,磁場中泥しょう鋳込み法による配向処理の目処がたったことから,種々の条件で作製した測定試料作製を行い,測定に用いる共振器の仕様をできるだけ早く決定する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由 研究計画時に予定していた購入備品(空洞共振器)は,その標準的仕様では複素透磁率スペクトルの周波数分散を観測するという本研究の目的に合致しない(測定点数不足)ことが明らかとなったため,実際の試料を測定しながら空洞共振器の仕様変更(長さを変更して共振点を増やす)を行うことになった. 使用計画 測定試料が作製できたため早急に共振器の仕様を決定して導入する.
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