研究課題/領域番号 |
17K06806
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研究機関 | 公益財団法人電磁材料研究所 |
研究代表者 |
渡邉 雅人 公益財団法人電磁材料研究所, その他部局等, 研究員(移行) (40249975)
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研究分担者 |
阿部 世嗣 公益財団法人電磁材料研究所, その他部局等, 研究員(移行) (20202666)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マグネタイト / スパッタリング / 整合ひずみ / 垂直磁化 / エピタキシャル成長 |
研究実績の概要 |
本研究ではマグネタイトのエピタキシャル成長に伴う整合ひずみによって生じる磁気異方性の増大について検討を行っている.昨年度は主にミスフィットが0.3%と小さなFe3O4(100)/MgO(100)スパッタ膜について検討を行った結果,化合物半導体エピ膜に匹敵する高い結晶性,6kG以上の磁化および120K以上のVerwey転移点を確認することができたが,予想される整合歪みに伴う大きな垂直磁気異方性は確認することができなかった. このため,今年度ミスフィットがより大きなSrTiO3(100) (7%), MgAl2O4(100) (3.7%)基板上への成長について検討を行った結果,両基板の場合において面内配向も制御された(100)配向のエピタキシャル成長することとMgO(100)の場合のような界面拡散は抑えられていることを確認したが,顕著な磁気異方性の増大は確認することができなかった. 今まで行ってきた配向の異なる多結晶およびエピタキシャルマグネタイト膜のメスバウアー効果の解析から磁気モーメントが<111>に近い方向を向いていることおよびマグネタイト本来の磁化容易軸も<111>方向であることから,今までの(100)配向ではなく(111)配向での検討を行うことにした.SrTiO3(111)基板上への成長を行い構造評価を行った結果,(111)配向するのと同時に回折ピークのシフトから1%以上の歪みが印加されていることが確認された.また面内および面直方向の磁化カーブおよびトルクカーブの解析から(100)配向では得られなかった垂直磁化膜であることが確認され,反磁界エネルギー2πMS2 = 1.5E+06 erg/ccよりも大きい垂直異方性を有すると推定される.マグネタイトはハーフメタルであるため,その垂直磁化膜はSTT-MRAMなどのスピンデバイス用途への可能性を期待することができる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度および30年度はじめまで,マグネタイトの(100)面のみにおけるミスフィット増大による異方性の増大を検討してきたが,顕著な異方性の増大は確認できなかった.そこで,多結晶およびエピタキシャル膜のメスバウアー測定から磁気モーメントが<111>に近い方向を向いていること,およびマグネタイト本来の磁化容易軸が<111>方向であることから,当初の(100)から(111)配向成長の検討に転換しFe3O4(111)/SrTiO3(111)スパッタエピタキシャル膜を作成したところ,マグネタイト垂直磁化膜を得ることができた.さらに膜厚を変化させることで異方性の大きくなる最適な膜厚が存在することがわかった.今後,この(111)配向マグネタイト垂直磁化膜の異方性についてさらに詳細な評価を進める予定である.
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今後の研究の推進方策 |
(111)配向したマグネタイト膜が垂直磁化膜であることから,その垂直磁気異方性エネルギーは1E+06 erg/ccオーダーであることが推定されるが,正確な評価のために強磁場9Tでのトルク測定を予定している (2.6Tでのトルク測定では45°法による外挿でも評価できなかった).また,異方性磁界と同時にGilbertダンピング定数の大きさも得られる強磁性共鳴FMRによる評価も予定している.ダンピング定数はSTT-MRAMなどのスピントロニクス用磁性材料としては磁気異方性の大きさとともに重要なファクタとされている.
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