研究課題/領域番号 |
17K06811
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
筧 芳治 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主任研究員 (90359406)
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研究分担者 |
佐藤 和郎 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, その他部局等, 主幹研究員 (30315163)
小栗 泰造 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, その他部局等, 主幹研究員 (80359413)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ひずみ抵抗薄膜 / 高温圧力センサ / スパッタリング |
研究実績の概要 |
課題1)イオンビームスパッタ装置を用いて、製膜時の酸素流量を制御して石英基板上にTiCxOy歪抵抗薄膜を作製し、XPSおよびホール効果測定等による評価を行った。その結果、TiCxOy歪抵抗薄膜中の酸素含有量の増加とともに、以下の知見が得られた。①膜中の酸素含有量は大きく増加し、一方チタン含有量はわずかに減少し、炭素含有量は大きく減少した。②Ti-C結合およびTi-O結合(TiO)に対応するピーク強度が減少し、逆にTi-O結合(TiO2)に対応するピーク強度が増加した。③室温における膜のキャリア密度は、一度増加した後減少した。④電気特性の温度依存性の結果から、TiCxOy歪抵抗薄膜は金属から縮退的に、さらにホッピング的な電気伝導へと変化した。④膜のゲージ率(GF)は緩やかに増加し、一方比抵抗の温度微分係数(TCR)は正から負へと減少した。 以上の結果から、TiCxOy歪抵抗薄膜の電気伝導が縮退状態となる製膜条件において、Ni-Cr合金(GFは約2)よりも大きい約4のGF、およびゼロに近いTCRを同時に実現できていることを見出した。 課題2)バッファ膜の導入によりTiCxOy歪抵抗薄膜の結晶性を向上させ、GFの改善を試みた。RFマグネトロンスパッタ装置を用いて、製膜時のAr流量を制御してMgOバッファ膜を作製した結果、室温で100配向を示す薄膜が得られた。さらに一部の膜について大気中でのポストアニール(PA)処理(500℃および800℃で10時間保持)を行い、結晶性の異なるMgOバッファ膜を作製した。石英基板および結晶性の異なるMgO(100)バッファ膜上に、課題1)で見出した製膜条件でTiCxOy薄膜を作製した結果、500℃でPA処理したMgO(100)バッファ膜上に作製した薄膜において、GFは約6まで向上し、この時のTCRは約40ppm/Kを実現できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TiCxOy薄膜が縮退的な電気伝導を示す時に、比較的大きなGF(約4)とゼロに近いTCRを同時に得られることを確認した。また、MgO(100)配向バッファ膜上に作製したTiCxOy薄膜のGFはすべて向上しており、バッファ膜の効果を確認できた。さらに、500℃で大気中PA処理を行うことで結晶性を改善したMgO(100)バッファ膜上に製膜したTiCxOy薄膜が、目標値である±100ppm/K以下のTCRおよび約6のGFを達成できており、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の課題についてはほぼ完了し、目標値である±100ppm/K以下のTCRおよび約6のGFを達成できている。平成30年度は、MgOバッファ膜の膜厚依存性やポストアニール処理条件の検討を進めるとともに、研究計画である①より大きい変形量を有するダイヤフラム構造のFEMによる解析、②補正用薄膜抵抗の電気特性と製膜条件との関係の解明を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費購入時の見積金額に差金が生じたため。差金分については、平成30年度に物品費として使用予定。
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