研究課題/領域番号 |
17K06812
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
上田 恭介 東北大学, 工学研究科, 准教授 (40507901)
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研究分担者 |
成島 尚之 東北大学, 工学研究科, 教授 (20198394)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 生体吸収性 / 骨形成能 / 抗菌性 / 非晶質リン酸カルシウム / 元素添加 |
研究実績の概要 |
Ti製硬組織代替デバイスの骨との迅速かつ強固な結合および抗菌性の発現を目的として、非晶質リン酸カルシウム(ACP)の溶解性を利用した高機能コーティング膜の創製を目指す。 昨年度までに、抗菌性元素であるAgを含有したAg-ACPコーティング膜、ACPの溶解性抑制元素であるNbを供添加したAg-Nb供添加ACPコーティング膜を作製した。いずれのコーティング膜も抗菌性を示すこと、Ag-Nb供添加ACPコーティング膜は24時間の擬似体液浸漬においても残存し、溶解性が抑制されたことで抗菌性と骨適合性の両方を有することが示唆された。 今年度は、ACPの溶解性抑制元素としてTaに着目し、Ag-Ta-ACPコーティング膜の成膜条件と組成の関係および擬似体液中における溶解挙動を調査した。 Ag添加量一定とし、Ta添加量を変化させたβ-TCP焼結体をターゲットとして、RFマグネトロンスパッタリング法によりAg-Ta-ACPコーティング膜を作製した。RF出力の増加に伴いコーティング膜中のAg濃度は減少した。これは、焼結後のターゲット中のAgは金属状態であり、高RF出力側ではターゲット表面温度が上昇することでAgが蒸発し、基板に到達するAg量が減少したためと考えられる。薄膜XRDからは、いずれの条件においても生成相は非晶質相であった。加えて、いずれの構成元素も深さ方向に対して均一に分布していることがSTEM分析およびXPS分析より明らかとなった。 抗菌性評価に用いる希釈ブイヨン培地(NB)にコーティング膜を24時間浸漬し、構成元素の溶出量をICP-MSにて測定した。Taを含有したACPコーティング膜は24時間後においても残存しており、Ta濃度の増加に伴い溶解は抑制されることが明らかとなった。いずれのコーティング膜からもAgイオンの溶出が確認され、抗菌性の発現が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
硬組織代替デバイス表面への細菌の付着による手術部位感染が一定の割合で生じている。そこで、本研究では骨形成能に加え、抗菌性の付与に着目し、研究を行ってきた。これは、ACPの溶解性を利用したものであり、ACPを担体として抗菌性元素であるAgを徐放させるというアイディアに基づいたものである。Nbと同様に、Ta添加においてもAg含有ACPコーティング膜の溶解性を抑制しつつAgの溶出がみられたことを見出した点で、おおむね順調に進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
Ag-Ta供添加ACPコーティング膜の抗菌性評価を行う。一方、生体内において過剰のAgイオンの溶出は細胞毒性を招く。そこで、Ag-Ta供添加ACPコーティング膜の細胞毒性評価を行い、最適なAg含有量、Ta含有量とACPの溶解性について検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度購入予定であった物品の納期が遅れ、次年度の会計となってしまったため。
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