研究課題/領域番号 |
17K06813
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
原 基 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (50156494)
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研究分担者 |
福本 倫久 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (20343064)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ジルコニウム / 耐水蒸気酸化性 / シリコン拡散層 / 拡散法 / ジルコニウムシリサイド / ハロゲン化物 |
研究実績の概要 |
Zr表面部にSi拡散層を作製する目的で,Si粉末(拡散剤),NaF(活性化剤),SiO2粉末(充填剤)の混合物の中にZr試料を入れ,一定時間加熱処理を行った。この方法での作製条件は混合物中におけるNaFおよびSi濃度,加熱温度とし,これらを変化させたときに形成されるSi拡散層の形態およびSi拡散層中におけるSi濃度の変化を調べた。まず,加熱時間(24時間),加熱温度(1273K)一定とし,混合物中におけるNaF濃度の影響を調べた。Si濃度を6mass%一定とし,NaF濃度を0,0.5,1および3mass%と増加させると,Si拡散層の厚さは4~30μmと厚くなったが,1mass%以上となるとSi拡散層と基材Zrの界面にボイドが形成され,基材との密着性が悪くなった。Si拡散層中のSi濃度はNaF濃度に依存せず約50at%であり,Si拡散層がZrSiにより構成されることがわかった。次に,混合物中のNaF濃度を一定(0.5mass%)にし,Si濃度を6,8,10mass%と増加させた。いずれの濃度も厚さ20~30μmのZrSiより構成されるSi拡散層が生成した。Si拡散層と基材Zrの界面に生成するボイドは,Si濃度が増加するほど小さくなり,数も減った。次に,混合物中におけるNaF濃度とSi濃度を一定にし,加熱温度を1173,1223,1273および1323Kと上昇させた。加熱温度の上昇によりSi拡散層の厚さは,15~40μmと厚くなった。Si拡散層は1273KまではZrSiにより構成されるが,1323KになるとZrSi2とZrSiにより構成され,ZrSi2中に多くのボイドが観察された。以上の結果より,緻密で基材Zrと密着性の高いSi拡散層(ZrSi)が形成される条件は,NaF濃度:0.5mass%,Si濃度:10mass%,加熱温度:1273K,であることが明かになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の目標は,緻密で,かつ基材Zrに対し密着性が高く,Si濃度が高いSi拡散層をZr表面部に形成させることであった。Si拡散層の作製には「Siのハロゲン化物ガス化+拡散法」を採用し,本方法における拡散層の作製条件である原料粉末(Si,NaF,SiO2)組成および加熱温度がSi拡散層の形態およびSi拡散層中のSi濃度に及ぼす影響を調べた。その結果,緻密で,基材Zrに対し密着性が高く,Si濃度が高い(50at%Si)Si拡散層が形成される条件を見出すことに成功した。このようなSi拡散層は,Zrの耐水蒸気酸化性を改善することが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究により,耐水蒸気酸化性を改善することが期待されるSi拡散層が作製されたことから,Si拡散層を有するZr試料について高温水蒸気環境で酸化試験を行い,この試料の耐水蒸気酸化性を評価する。高温水蒸気酸化試験として,従来法である酸化に伴う試料質量の増加を測定する方法(熱重量法)の他に,当研究室で開発した,Zrの水蒸気酸化により発生する水素ガス量を連続的に測定する酸素ポンプセンサー法を採用する。このため,水蒸気酸化試験に先立ち,酸素ポンプセンサー法の水蒸気酸化試験装置を作製する。水蒸気酸化試験は,未処理Zrと比較しながら行い,酸化速度の違いや酸化に伴う質量増加の違いを明らかにする。さらに,酸化過程に伴うSi拡散層の形態,組成変化やこれに伴うSi拡散層上に形成する酸化皮膜の変化をSEM観察やEPMA分析により調べる。このような実験を通してSi拡散層を有するZrの耐水蒸気酸化性の機構を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 次年度使用額が約80万円生じた。この理由は,Si拡散層を作製する方法として「ハロゲン化物ガス化法+拡散法」の他に「溶融塩電析を媒体としたSi電析法」を計画していたが,「ハロゲン化物ガス化+拡散法」で良好なSi拡散層の作製に成功したため,「溶融塩電析を媒体とするSi電析法」は実施しなかった。このため,電析に必要な備品,消耗品を購入しなかった。この分,余剰金が生じた。 (使用計画) 平成30年度には水蒸気酸化試験を実施する。当初の計画では熱重量法のみでの酸化試験を計画していたが,酸化速度の経時変化が測定できる「酸素ポンプ・センサー法」での酸化試験も並行して行うことにする。このため,余剰金を「酸素ポンプ・センサー法」に必要な備品を購入することに充てる。
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