研究項目①(a)において、ドーパント種が金色調光沢膜の物性に及ぼす検討を詳細に行ったところ、光沢膜の金色の色相が赤金(従来のClO4-をドーパントとしたとき)から青金へと変化するドーパント種BF4-を見出した。さらに、このドーパント種は膜の結晶化度を著しく増大させることがわかり、論文報告を行った。また、BF4-をドープしたオリゴ3-メトキシチオフェン電解重合膜を作製したところ、上記塗布膜と同様に反射率の高い青金の色相を呈することを見出し論文報告を行った。さらに、オリゴ3-メトキシチオフェン塗布液についても詳細な検討を行い、塗布液の中では時間経過とともにπ-ダイマーやπ-スタックが時間とともに形成されること、および塗布液にベンゼンを添加することでπ-ダイマーが形成されやすくなることを見出し、それぞれ論文報告を行った。 研究項目①(b)においては、3-メトキシチオフェンに対する従来の置換基、メチル、エチル、n-プロポキシおよびn-ブトキシ基に加え、新たにi-ブトキシ置換体を合成し、ラメラ結晶層間距離そして色相などの光学物性に及ぼす影響についてのデータ補完を完了した。 研究項目②においては、原子間力顕微鏡観察によって、塗布膜が10 nm径・数マイクロメートル長のナノファイバーの集合体であることを明らかにした。そして、令和1年度にこれらの知見を基に国際会議報告および論文投稿を行った。 研究項目③については、オリゴ3-メトキシチオフェンとポリエステルのポリマーブレンドを作成し、その反射率、分子配向、機械的強度、混合比率依存性、ブレンド膜の表面・内部の元素分析と結晶構造解析を行い、ポリマーブレンド膜の基礎物性についての検討を行った。今後は、ブレンド膜の応用物性について検討を行う予定である。
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