研究課題
本研究グループは、大気圧下での誘電体バリア放電により誘導された非平衡平面プラズマを製膜技術へ応用してきた。一般的なプラズマを利用した製膜では、3次元空間にプラズマを発生させ、この空間内に基板を配置する。この方式では、均質な製膜が可能な反面、基板全体がプラズマ内に存在するため、高エネル ギープラズマに対する耐抗性・耐熱性が基板に要求される。さらに、パターニングに対し、マスキングやレジストといった追加処理が要求される。一方、従来の 分子構造や相互作用を利用した液相からの化学的手法による低温製膜やパターニングにおいて、バルクの液相中では均一分散している修飾子であっても、溶媒を 除去する過程で基板からの影響を強く受けて均一性を保つことができず、結果的に不均質な膜が形成される。このような現状にあって、本研究では、昨年度に確立された技術をさらに発展させ、液相中に配置した放電電極と製膜基板間の液相をバイアス印加により局所的に排除して微小空洞を形成し、この空間に平面プラズマを閉じ込める新規製膜技術を提案した。特に、従来法で課題となっていたグリッドパターンの微細な制御に対し、市販の感光基板を利用したレジストによりマイクロメータオーダーでの電極グリッドパターンの制御することにより、微小空洞内のプラズマの安定化とともに、効率的な照射を実現することに成功した。あわせて、液中プラズマの空間安定性を高めるために電極にわずかに傾斜を設け、当初の目的の1つであるTiO2の製膜に利用した。さらにこの技術を色素増感太陽電池(DSSC)の作用極の作製・評価を行い、次年度に予定するモジュール化への指針を得ることができた。以上より、本研究は基板上の前駆体液膜へ局所的にプラズマを照射して前駆体を高速分解するだけでなく、局所プラズマによるパターニング製膜といった加工技術へも展開されていく点が特徴である。
2: おおむね順調に進展している
液中プラズマの製膜技術に関し、アルミナ製の電極固定用改良型ホルダーを設計・作製し、これを利用した製膜試験を実施した。まず、チタンテトライソプロ ポキシド(TTIP)溶液を満たした容器内にガラス基板とプラズマ発生用電極を0.1 mmの間隔で向かい合わせに固定した。次に、空気を電極上部から注入後、放電用電極に所定の電圧を印加して形成された微小空洞内にプラズマを発生させた。この際、毛細管現象により前駆体溶液がガラス基板上に逐次供給され、プラズマ照射による前駆体の分解によりTiO2膜が形成差らることを確認した。また本年度は、この製膜技術を多孔質TiO2層の製膜に利用した。事前にTiO2微粒子を塗布・乾燥させた膜に対し、上記のプラズマ照射による製膜を併用したところ、TTIP溶液が微粒子間のネッキング剤として作用し、従来困難であったTiO2層の多孔質化に初めて成功した。この結果により、当初の予定通り、プラズマによる製膜技術を色素増感太陽電池(DSSC)作用極の作製へ挿入する道筋が得られた。さらに、多孔質TiO2層の詳細な製膜条件の検討を行った。膜厚10μmのTiO2層の製膜に際し、5μmずつ積層させることにより、TiO2粒子の密着性が向上した、最も高い変換効率1.3 %が得られた。しかし、本研究で作製したセルの変換効率は、一般的なDSSCに比べ低かった。今後、TiO2粒子間のネッキングの促進に関する知見をもとに、製膜条件の再検討を行う予定である。以上の成果をもとに、本年度は本研究の最終目的である、DSSCセルのモジュール化へ研究へ進展させることができる見込みである。
基本的なプラズマ制御条件をもとに、パルス波(レンタル機)の新規導入により、 プラズマの高エネルギー化だけでなく、電極上のプラズマの空間分布の微細制御を試みる。この際、ラングミュアプローブによりプラズマの空間分布状態を逐次観察する。得られた知見をもとに、ダイレクトパターニング製膜の精度を高める。上記の成果をもとに、10~5mmのライン状にダイレクトパターニング製膜を実施し、2×2型モジュールを作成する。このモジュールには、直列セルと並列セルの要素をそれぞれを組み込み、モジュール技術を評価する。なお、予定するモジュールのセルの面積は約1cm2であるため、最終目標は100 mW/moduleの出力を想定している。この成果は将来的にモジュール製造への要素技術へと進展することになる。
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International Journal of Technology
巻: 10 ページ: 147~147
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Journal of the American Ceramic Society
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http://okuyalab.sakura.ne.jp/