研究課題/領域番号 |
17K06818
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
川人 洋介 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (70379105)
|
研究分担者 |
川上 博士 三重大学, 工学研究科, 准教授 (00252338)
西本 浩司 阿南工業高等専門学校, 創造技術工学科, 准教授 (40501169)
Dino Wilson 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (60379146)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 水中 / レーザ溶接 / キーホール現象 / 水素生成 / 触媒 / 化学反応 / 第一原理計算 / 地球科学 |
研究実績の概要 |
水素は供給源の多様化や環境負荷低減に資するエネルギー源で、水素生成は人工光合成や燃料電池における重要な研究課題である。一方、私の研究分野である溶接における水素は、鋼材の水素脆化や溶接部の水素割れを招く原因となる。我々は水中レーザ溶接時に水素が生成されることを新たに発見した。通常、溶融金属が水に触れると、水は水蒸気に、溶融金属は冷却され凝固する。このような相変態だけでは水素生成は起こらない。水の直接分解による水素生成には数eVのエネルギーが必要であり、本研究で使用したレーザ(波長1μm)の光エネルギーは1 eV程度なので、水と高温の金属との触媒反応および化学反応が必須となる。レーザ溶接時の溶融金属の温度を知ることは、水中レーザ溶接時の水素生成機構を解明には重要であり、レーザ溶接の特殊な溶融機構(キーホール現象)ではこれまで明らかにされていなかった。本年度は、溶融金属からの熱放射の分光計測により、溶融金属温度はキーホール周辺のみが2000 Kから2500 Kの高温であり、それ以外ではステンレス鋼の融点程度の1700 Kに達し、熱および質量のバランスするシステムの存在を明らかにした。本成果はOptics Express ( IF: 3.307 ) Vol. 26, Issue 5, pp. 6392-6399 (2018)に掲載された。また、キーホール周辺の高温の溶融金属のみが水に接するレーザ出力を抑えた条件で実施したところ、数ml(準備実験の数十分の一)の気体しか発生せず、効率的な水素生成には、溶融金属が水に触れる時に固-液でなく、液-液として接する必要があることを示唆する新たな知見も得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
”レーザ溶接時に水中で金属が溶融すると、どうして水素が生成するのか”を明らかにする為、水中レーザ溶接時の水素生成機構の解明と水素生成に適正な元素と最適なプロセスの探求を行い、新しい知見も見つかり、基礎的な必要用件が判明してきており、研究はおおむね順調と判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度は、金属蒸気に注目し、第一原理計算に基づいた水素分子発生に関するシミュレーションを新たに行う予定であり、今回得られた新たな知見を踏まえて、適正なモデル化等について研究分担と密に議論し、”レーザ溶接時に水中で金属が溶融すると、どうして水素が生成するのか”を明らかにできるように検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
IFが高い外国雑誌(IF: 3.307) への研究成果掲載を優先し、さらに情報取集・技術打合せに予想以上の費用がかかり、高額の水中環境冶具の購入を見送り(既存の冶具で対応し、研究進捗には影響ない)、このような状況に至った。差引額に関しては、次年度以降、水中環境冶具と同等になるように既存の冶具を効率的に改修し、計画的に利用する。
|