近年,高い強度を維持したまま,熱伝導性を向上させた高機能材料の開発が望まれており,複合材料の熱伝導性を支配する因子の詳細な解明が必要となってきている。また,サブナノ~ナノメートルサイズの強化相を持つ金属基複合材料の研究が盛んに行なわれている。強化相のサイズがナノメートル領域になると界面熱抵抗の影響が無視できなくなり,有効熱伝導率に大きな影響を与える。しかしながら,界面熱抵抗は実測することが非常に難しく,これまで実測値の報告は殆どなされていない。本研究では,種々の金属基複合材料の熱伝導率測定,組織観察およびコンピューター・シミュレーションを組み合わせることにより,母相―強化相界面熱抵抗を求めることを目的とした。 強化相の体積率を変化させて,Al-AlN,Al-Si,Al-TiC粒子分散型複合材料,Al-Gf(鱗片状黒鉛)複合材料を粉末冶金法により作製した。原料粉末はV型混合器で混合し,放電焼結機を用いて焼結を行った。作製した試料に対して,相対密度及び有効熱伝導率の測定を行った。また,試料の組織観察には走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた。SEM像にフィルタリング処理,閾値処理,オープニング処理を施した後,熱伝導シミュレーションにデータを読み込ませて両端に熱源を追加した。有限体積法(FVM)により定常状態の温度分布を計算した後,有効熱伝導率の算出を行った。このシミュレーションに必要な設定値は,試料の相対密度,強化相の熱伝導率,母相の熱伝導率および界面熱抵抗である。界面熱抵抗を変化させながらシミュレーションを行い,実測された有効熱伝導率とシミュレーションにより計算された有効熱伝導率とを比較することによってAl-AlN,Al-Si,Al-TiC粒子分散型複合材料およびAl-Gf(鱗片状黒鉛)複合材料の界面熱抵抗を見積もった。
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