研究課題/領域番号 |
17K06823
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
岩森 暁 東海大学, 工学部, 教授 (90345603)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 活性酸素 / 表面改質 / ポリスチレン / 細胞培養基板 / 色素 / インジケータ |
研究実績の概要 |
(1)表面処理条件の検討:添加ガスの影響 笑気ガスは毒性が強いため、今年度はアンモニアを用いてポリスチレン表面に窒素系の親水基の導入による親水性の表面改質を試みた。ポリスチレン表面は活性酸素処理後には窒素系官能基がわずかではあるが付与され、表面の親水化が進んだ。しかし処理後のポリスチレン基板上で細胞培養した結果 、初期接着は良好であったが、その後細胞は剥離した。したがって、本研究で付与した窒素系官能基は必ずしも細胞接着に良好ではないことが分かった。 (2)活性酸素の表面作用量の計測と、滅菌バッグ内での化学反応の解明 滅菌バッグ内で起こる化学反応のモデルを構築すると共に、従来技術との差異を明確にする。メチレンブルー薄膜とスピントラップ法を用いて、不織布内の活性酸素の分布をモニタリングする手法として1面が解放されているアルミニウム製の直方体容器で解放されている面を不織布で覆った試験容器を試作した。不織布面に平行に3段のトレイを設置し、それぞれのトレイに色素インジケータ薄膜やスピントラップ剤含有の水溶性高分子薄膜を3段に設置し、不織布からの距離の違いにより色素インジケータの脱色程度とESRによる活性酸素のトラップ率からOH*の濃度分布と不織布内でのOH*の生成メカニズムについて考察した。その結果、活性酸素種の一つで、不織布外で生成した比較的長寿命であるオゾンが不織布を通り内部にまで拡散し、不織布内部に存在する水分子と反応することで不織布内にOH*が生成したものと推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)表面処理条件の検討:活性酸素処理における各種パラメータの影響(添加ガスの影響) アンモニアなどの添加ガスは細胞接着・伸展を目的にした表面改質には有効ではないことが分かった。 (2)活性酸素の表面作用量の計測と、滅菌バッグ内での化学反応の解明については、おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)表面処理条件の検討:平成30年度までの検討で終了。 (2)活性酸素の表面作用量の計測と、滅菌バッグ内での化学反応の解明: 色素インジケータがなぜ、活性酸素種の中でOH*のみに反応するのか、そのメカニズムを解明する。 (3)細胞分化と遺伝子解析:細胞接着・伸展が予想されるほど顕著な効果は得られなかったので、平成31年度は(2)に注力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度当初、使用する実験装置(活性酸素精製装置とその比較実験で使用するプラズマ処理装置の保守・整備のための予算を確保するために科研費の予算を計上する予定であったが、学事予算で対応できることとなった。そのため2019年度は繰り越した予算を含め、研究を加速するために消耗品や一部の備品、研究成果の公表などに計上したい。
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