研究課題/領域番号 |
17K06829
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研究機関 | 鹿児島工業高等専門学校 |
研究代表者 |
東 雄一 鹿児島工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (70709336)
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研究分担者 |
岩本 知広 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (60311635)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 超音波接合 / Mg合金 / LPSO相 |
研究実績の概要 |
本研究課題の主な目的となる超音波スポット接合継手の凹み量低減を目指し,今年度は,凹み量を制御した接合継手を用意し接合性の評価と継手内部の組織変化にどのような影響を及ぼすのかについて評価を行った.凹み量を制御したことによる評価をするために,接合パラメータの接合エネルギー,出力,加圧力は一定として,それに加えて凹み量を0.1mmごとに制御した接合を実施した.ここで,接合の実験をしている中で,試験片をボルトで固定した場合と固定しない場合で凹み量に差が生じ,固定無の方が凹み量が大きくなることが分かり,固定の有無についても検討した.ここで,凹み量の条件は,固定無の場合,凹み量:0.10mm,0.20mm,0.30mm,0.40mm,制御なし,固定有の場合,凹み量:0.10mm,0.20mm,制御なしとした. 固定無の場合,凹み量が0.30mm以上になると凹み部からき裂が生じた.また,固定有の場合も凹み量制御なしにおいて凹み量が0.38mmになった場合に凹み部からき裂が生じた.(制御なしの場合に,凹み量にばらつきがあり,0.38mmが凹み量が一番最大であった)これらの結果から凹み量が0.30mmを超えると接合時の過剰な応力集中などの要因で割れが生じることが分かった.また,接合強度は固定有で凹み量:0.20mmでより高い強度が得られ,凹み量制御の必要性が見いだされた.しかし,これについては試験のサンプル数が少なく,今後追加実験を実施しより慎重な評価をする必要がある. 継手内部の組織変化については,凹み量を制御したことでLPSO相の劇的な形態変化などは見られず,母材の形態を維持した状態で接合されていた.さらに界面近傍を評価したところ,微細化した結晶粒からなるバンド状の組織が形成されていることも確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,H30年度は凹み量を制御した継手に対して微細組織観察から接合性に寄与する組織形成の影響について評価する予定であった.しかし,昨年度に過剰な凹みにおいて凹み量が組織変化に寄与する影響を評価し,H30年度もその続きでデータ解析などしていく中で本来の目的である凹み量を制御した継手の評価も並行して実施している. H30年度は,凹み量を制御して接合したサンプルを用意し,接合性の評価と微細組織の評価を行った.これらの実験をしていく中で,試験片の固定の有無によっても接合性に違いが見られるなど当初考えていなかった現象も見られ評価する項目も増えてきた.このような状況の中で凹み量が0.30mmを超えるとき裂が生じることや凹み量:0.20mmのときにより高い接合強度が得られたこと,継手内部の微細組織(LPSO相の形態)は母材の形態を維持した状態で接合されていること,接合界面近傍では微細化した結晶粒からなるバンド状の組織が形成され接合が達成されていることなどの知見が得られている. 以上のことから凹み量を制御したことによる接合強度の評価や微細組織の評価などを実施しており,進捗状況としては概ね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
H31年度/令和元年度の当初の計画は,凹み量を制御した継手の微細組織観察(ミクロ観察とナノ解析)でった.上記の現在までの進捗状況にも記載した通り,研究は概ね順調に進展していると捉えている.しかし,接合強度と微細組織の関係性についてはまだ不明な点もありより詳しくデータ解析をしていく必要がある.また,現状の結果として凹み0.20mmでより高い接合強度が得られていることから,サンプル数を増やして信頼性のあるデータ取得をする必要性もあると考えている.この0.20mmという条件に着目して出力を変化させた場合の接合条件の最適化についても興味深い点である.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が154,887円生じた.これは,当初予定していた金属顕微鏡と精密平面研磨機の購入が不要となり,また研究成果の発表のための学会発表および引率が増えたことにより計画から増減が生じた. これについては,次年度の物品購入費として充てる予定である.
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