本研究課題の主な目的は超音波スポット接合継手の凹み量低減であり,初年度に実施した凹み量が過剰になった場合の継手内部の組織変化に及ぼす影響について,これまでは,マクロ的な塑性変形挙動については分析していたが,接合界面近傍のより詳細な分析を微視的組織観察の観点から実施した.当初の予定では,凹み量低減による微視的組織評価を実施する計画ではあったが,凹み量が過剰になった場合の組織変化について興味深い現象が生じていることが分かってきたので計画を変更した. 過剰な凹み量は,0.47mm,0.56mm,0.67mmの3種類の試験片を用いて,微視的組織観察を実施した.凹み量が増加していくと,押出方向に伸びているLPSO相は分断され,まだら状の形態に変化していき,LPSO相の連続性がなくなったことにより,接合プロセス中のせん断変形がMg母相によるせん断変形にシフトし,マクロ的な変形である凹み量の増加に寄与していたと考えられる.また,凹み量が増加したことにより,試験片を挟んでいる溶接チップとアンビルの間隔が狭くなり,熱の影響を顕著に受けていた.凹み量が増加し,まだら状になったLPSO相をより詳細に観察すると,3µm程の小さなブロック状LPSO相からなっていた.これは接合界面に沿って観察された.また,最も過剰な凹み量のサンプルでは,接合界面の所々に溶融組織が生じていた.接合プロセスが進み,塑性変形が過剰になることで熱の集中性が増し,熱の影響が組織形成に寄与したと考えられる. これらの明らかになったことについて,学術論文にまとめ,投稿し査読を受けている.
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