| 研究課題/領域番号 |
17K06831
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| 研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
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研究代表者 |
今井 祐介 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究グループ長 (30356513)
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| 研究分担者 |
菅 章紀 名城大学, 理工学部, 准教授 (70387760)
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| 研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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| キーワード | 誘電特性 / 高周波 / コンポジット / 六方晶窒化ホウ素 / ウィルマイト / 配向 |
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| 研究実績の概要 |
フィラーの分散・配向状態がコンポジットの誘電特性に及ぼす影響を解明するため、形状および特性に異方性を有するフィラーとして知られる六方晶窒化ホウ素（hBN）を用いて、フィラー含量および配向状態の異なるコンポジット試料を作製し、異なる共振モードを利用する複数の測定手法を用いることで、誘電特性の異方性を評価した。作製したコンポジットは大きな比誘電率異方性を示し、その大きさと異方性フィラーの配向状態の相関から、フィラー配向の誘電特性への影響に関する知見が得られた。一方、誘電正接にはあまり異方性は見られなかった。低損失フィラーの形状制御の可能性の検討として、ウィルマイト(Zn2SiO4)に対して溶融塩法によるフィラーの形状制御の可能性とそれを用いたコンポジットの誘電特性について検討した。固相合成したウィルマイトに対し、KClを用いることにより柱状ウィルマイトフィラーが得られ、KClの添加量によりフィラーサイズが異なることが明らかとなった。10～30vol%の柱状ウィルマイトフィラーを充填したコンポジットの比誘電率は、Bruggemanモデルと良い一致を示しながら、2.6～3.3まで変化した。また、誘電正接は30vol%充填したコンポジットにおいて、4.5×10－4であり、比較的低い誘電正接が得られている。これらの誘電特性は、固相合成したウィルマイトフィラーを用いたコンポジットの値とほぼ同等であり、フィラーの形状による顕著な差は認められず、低損失な柱状ウィルマイトフィラーが得られることが明らかとなった。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
形状および特性に異方性を有する誘電フィラーとして、湿式ジェットミルによる薄片化処理を施した六方晶窒化ホウ素（hBN）を用いて検討を行った。iPPをマトリックスとして、フィラー含量（10, 20, 30vol%）及び配向状態（面内配向の程度）の異なる板状試料を作製し、スプリットシリンダ共振器（TE011モード、12GHz）と平衡型円板共振器（TM0m0モード、10~130GHz）を用いて、面内および厚さ方向の誘電特性を評価した。いずれの試料においても、非常に大きい比誘電率の異方性（面内＞厚さ）が観測された。同フィラー濃度において、その差は面内配向の程度が強い試料の方が大きく、異方性フィラーの配向に由来する差であると推測された。一方、誘電正接に関しては、誤差の範囲内で面内および厚さ方向の間に有意な差は見られず、いずれも4×10－4未満の非常に低い値を示した。
固相法で合成したウィルマイト原料とKClを助剤に用い、焼成・洗浄することにより、柱状のウィルマイトフィラーが得られる合成手法を確立した。KClの添加量に依存して、フィラーサイズは変化し、最大で約10μmの柱状ウィルマイトフィラーが得られた。この柱状ウィルマイトフィラーはマトリックスiPPに対して30vol%まで充填したコンポジットを作製することができ、断面SEM観察によりフィラーの均一な分散状態が確認できた。またコンポジットの誘電特性の評価には、フィラー形状の影響を明らかにするために、固相合成・粉砕したウィルマイトフィラーと柱状ウィルマイトフィラーを用いて評価した。比誘電率と誘電正接はフィラーの充填量に伴い増加傾向を示したが、フィラーの形状による顕著な差は認められず、柱状ウィルマイトフィラーを30vol%充填したコンポジットにおいて、誘電正接は4.5×10－4であり、比較的低い誘電正接が得られている。
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| 今後の研究の推進方策 |
2018年度の研究において、柱状ウィルマイトフィラーの合成プロセスが確立され、コンポジットの誘電特性の充填量依存を明らかにした。ウィルマイトフィラーを用いたコンポジットでは、フィラー形状制御による誘電特性の顕著な変化は認められず、比較的良好な誘電正接が得られている。また、湿式ジェットミル処理により薄片化したhBNも、低誘電損失コンポジットを得ることができ、配向制御により誘電率の異方性を発現することが確認できている。フィラーの形状制御は、これまでの知見から熱膨張や熱伝導率の改善に有効であると考えられる。このため、今後、コンポジットの熱膨張と熱伝導率の評価を進め、hBNの薄片化やウィルマイトフィラーの柱状化による低熱膨張・高熱伝導率化の可能性を明らかにし、ミリ波応用に向けた低損失コンポジット誘電材料の設計指針を確立する。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
スケジュールが合わず予定していた学会への出張を１件取り止めたため、残額が生じた。次年度、試薬類・消耗器具類等の物品費および旅費に充てる計画である。
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