セラミックスフィラーをポリマーマトリックスに分散させたコンポジット誘電体において、低誘電損失セラミックスフィラーの組成や形状・表面状態の制御、および、コンポジット中での分散・配向状態について検討を行った。セラミックスフィラーについては、スピネル系(MgAl2O4)、フォルステライト系(Mg2SiO4)、ウィルマイト系(Zn2SiO4)において、原料や合成手法等の検討により、板状、柱状、球状など形状・大きさの異なる粒子を合成する手法を確立した。いずれの粒子もGHz帯において低損失フィラーとして用いることができるものであった。また、湿式処理により作製した薄片化六方晶窒化ホウ素(hBN)粒子も、誘電特性に対する悪影響はなく、低損失フィラーとして活用できることを確認した。異方形状を有する各種フィラー粒子を用いて、コンポジットの成形方法を制御することにより、分散・配向状態の異なるコンポジット誘電体の板状試験片を作製し、高周波誘電特性・熱伝導特性等の異方性を評価した。異方性の大きいフィラーの配向性を乱す成形を行うことにより、板厚方向の熱伝導特性を向上できることを明らかにした。誘電損失に関してはフィラー形状の影響はさほど大きくなかった。比誘電率の組成依存性に関して、特に異方性の強い薄片化hBNを用いた系において、非常に強い異方性が確認された。フィラーの比誘電率の異方性に加え、形状異方性に由来する配向状態への影響を考慮する必要があることが明らかとなった。以上から、フィラーの組成や分散・配向状態の制御が高周波コンポジット誘電体の材料設計において重要であることを明らかにした。
|