研究課題/領域番号 |
17K06833
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
大塚 恵子 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 有機材料研究部長 (50416286)
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研究分担者 |
木村 肇 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 有機材料研究部, 研究主任 (60416287)
米川 盛生 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 有機材料研究部, 研究員 (60724151)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ポリロタキサン / ネットワークポリマー / 強靭性 / 高耐熱性 |
研究実績の概要 |
本研究は、ネットワークポリマーに導入されたポリロタキサンの一次構造や配合条件、硬化条件と相構造形成や靱性との関係を明らかにして、ポリロタキサンの特性をネットワーク構造中で発現させるための設計指針を確立し、それを基にポリロタキサンを応力緩和材料として用いた新規な強靭かつ高耐熱ネットワークポリマーの材料設計を行うことを目的としている。平成30年度は、これまでに得られたポリロタキサンの一次構造と相構造形成の関係を基に、アミン硬化エポキシ樹脂におけるポリロタキサンの配合条件が相構造形成に与える影響について検討した。 ポリロタキサンとして、末端の反応性基や軸高分子のポリエチレングリコールの分子量の異なるものを用いた。ポリロタキサンの環状成分の水酸基に導入したポリカプロラクトン鎖の末端の反応性基としてエポキシ樹脂と反応性がないものを用いることで、ポリロタキサンがエポキシ樹脂ネットワークに組み込まれない材料設計を行なった結果、エポキシ樹脂マトリックス中にポリロタキサンがナノ分散しているナノ相分離構造を形成させることに成功した。 いずれの配合系においてもポリロタキサンの配合により靭性と耐衝撃性の向上が認められたが、これは、ポリロタキサンがエポキシ樹脂マトリックス中でナノ分散することで材料にかかった応力が緩和されたためであると考えられる。一方で、ポリロタキサンがエポキシ樹脂硬化系に組み込まれないことから、末端基やポリエチレングリコールの分子量の違いによらず、ポリロタキサンの配合割合の増加とともにガラス転移温度は低下した。しかし、配合条件を最適化することで、ポリロタキサンの少量(5%)添加により、未変性樹脂の耐熱性をほぼ低下させずに、靭性を1.8倍、耐衝撃性を1.4倍に向上できることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに、エポキシ樹脂をベース樹脂として、アミンを硬化剤として用いた場合のポリロタキサンの一次構造や配合条件、硬化条件と相構造形成や靱性との関係について検討を行ってきた。さらに、化学構造の異なる硬化剤を用いた場合のネットワーク構造が相構造形成に与える影響について調べるための硬化物作製条件の最適化が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、化学構造の異なる硬化剤によるエポキシ樹脂とポリロタキサンの相構造形成や硬化物物性への影響について検討するために、硬化剤としてフェノールノボラックや酸無水物を用いた系について硬化物を作製し、硬化物の各種物性測定による靱性や耐熱性、機械特性と相構造形成との関連性について明らかにする。さらに、強靭かつ高耐熱ネットワークポリマーの開発を目的として、ビスマレイミド樹脂をベース樹脂としたポリロタキサン配合系の硬化条件の最適化を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
靭性測定用試料作製のための加工機を購入予定であったが、希望の仕様機種が予算内で購入できなかったために次年度使用額が生じた。残金は、次年度に当初計画の直接経費と合わせて物品費として使用する予定である。
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