研究実績の概要 |
理論班は,CrAlGeに対して実験班から示唆されたCr,Al,Geの不規則性を考慮した詳細な第一原理計算をあらたに実施した。(1)AlとGeの不規則性を考慮した様々な構造に対して計算した結果,これらはエネルギー的に縮退しており,ハーフメタル的な電子構造,分子あたりの磁化はどれも同じであることが分かった。(ただし,各Cr原子の磁化は構造によって大きな違いがある。)(2)CrとAl(Ge)が交換することを考慮した構造(構造A)に対する計算結果からは,ハーフメタル的な電子構造が破壊され分子あたりの磁化も大きく変化することが分かった。残念ながら,構造Aはエネルギー的には不安定(すなわち,CrとAl(Ge)が交換しない構造よりエネルギーが高い)という結果となった。これらの成果は,実験班の解析結果とともに論文としてまとめ,関連学会に投稿し受理された。 実験班は,Mn基擬二次元磁性体MnAlGeと同系化合物であるMnZnSb-CrZnSbまたは,MnZnSb-FeZnSbに着目し,試料合成,特性評価を行った。 どちらの系においても,全組成領域でMnZnSbと同様の正方晶Cu2Sb型構造となり,Cr-rich領域でTiSi2型となるMnAlGe-CrAlGe系と異なることがわかった。MnZnSb-CrZnSbではMn-rich領域でキュリー温度は上昇するが,よりCr-rich組成で減少し消失する。CrZnSbは強磁性を示さず,磁化曲線は非常に小さい磁化を示した。CrZnSbの熱磁化曲線には2つのカスプを観察し,磁場中X線回折測定によって結晶構造と磁性の関係について評価した。論文投稿準備中である。一方,MnZnSb-FeZnSbにおいては,Fe組成の増加とともにキュリー温度は減少する。FeZnSbの熱磁化曲線は160 K付近にカスプがあらわれ,強磁性的でないことがわかった。
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