研究課題/領域番号 |
17K06844
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
大家 渓 成蹊大学, 理工学部, 助教 (50549962)
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研究分担者 |
岩森 暁 東海大学, 工学部, 教授 (90345603)
橋本 良秀 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (40638384)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 反応性スパッタ / 酸化チタン薄膜 / 表面処理 / 抗血栓性 |
研究実績の概要 |
安価かつ迅速に金属薄膜や酸化物薄膜を作製できる反応性スパッタ技術を用い、組成や結晶構造が異なるチタン酸化物薄膜の作製を行うことにより、抗血栓性に優れるチタン製材料の作製を目指すことを本研究の目的としている。初年度である2017年度は、(1)反応性スパッタにおける最適な製膜条件の確立、(2)製膜した試料の最適な熱処理条件の模索、(3)製膜した試料の表面処理方法の模索、(4)試料の生体適合性評価の条件出し、の4点に焦点を絞って研究を行った。 (1)では、反応性スパッタにおけるモードを制御することにより、チタン酸化物薄膜中の二酸化チタンの含有量を77~98%まで制御できることを明らかにした。さらに、(2)の熱処理により、結晶構造も制御できる可能性が示唆された。この際、化学状態の他に、表面粗さやぬれ性など総合的な表面性状に関する検討を行った。(2)についてはさらなる精査が必要であり、次年度でも引き続き検討を継続する。(3)では、紫外光と活性酸素を同時に試料に曝露することにより、試料表面の酸化状態を促進できることが分かった。本件もさらなる精査が必要であり、次年度でも引き続き検討を継続する。(4)は作製した試料の血小板粘着特性の評価に重点を置き、主に実験方法の確立に着手した。上記(1)~(3)の研究が確立し次第、次年度の血小板粘着試験に着手する。また、すでに実験系が確立できている細胞培養試験にも着手し、in vitroレベルでの包括的な生体適合性試験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】で述べたとおり、当該年度は4種の検討項目を実施した。(1)反応性スパッタにおける最適な製膜条件の確立、および、(2)製膜した試料の最適な熱処理条件の模索では、着実にチタン酸化物薄膜中の化学組成や結晶構造制御が行えつつある状態であり、概ね順調に研究が進捗している。(3)製膜した試料の表面処理方法の模索として活性酸素および紫外光を用いた表面酸化を目的とした表面処理に着手し、本件も活性酸素および紫外光曝露が当該試料の表面処理技術として応用可能であることが示唆されている。(4)は次年度に向けた実験系の確立に重きを置いたが、本件も順調に進捗した。以上より、研究の進捗状況・達成度は概ね良好であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
【現在までの達成度】で述べた(1)~(4)の項目の検討をさらに進めるとともに、動物実験モデルの構築等、生体適合性評価に重点を移行していく。さらに、各項目の有機的な連携も視野に入れる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は材料作製とその評価に重きを置いて研究を行った。製膜条件の模索や結晶構造制御まで到達するに至ったが当初の予定よりも時間を要し、その後の生物学的評価の遂行費用が予定よりも安価に終わった。生物学的評価に関わる研究は次年度に重点的に行う予定である。
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