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2017 年度 実施状況報告書

全固体リチウムイオン二次電池の充放電時におけるリチウムイオン移動機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K06846
研究機関名城大学

研究代表者

土屋 文  名城大学, 理工学部, 教授 (90302215)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードリチウム酸化物 / リチウムイオン二次電池 / リチウムイオン移動機構 / 飛行時間型反跳粒子法 / リチウム蓄積量その場測定
研究実績の概要

パルスレーザー堆積法およびマグネトロンスパッタリング法を用いて、厚さ約100 nmのLiCoO2を正極、約150 μmのLi1+xAlxTi2-x(PO4)3を固体電解質(LATP)、約20 nmの金(Au)およびプラチナ(Pt)を電極とした寸法約15x15x0.15 mm3の全固体リチウムイオン二次電池(Au/LiCoO2/LATP/Pt)を作製した。正極のLiCoO2および電圧印加によりLATP内に形成される負極のLixTiy(PO4)3は酸化還元反応を引き起こす活物質であり、AuおよびPtは電子伝導体として働く。作製した電池中の初期リチウム(Li)濃度について、飛行時間型反跳粒子検出(TOF-ERD)法を用いて測定した。TOF-ERD法の場合、若狭湾エネルギー研究センター、京都大学附属量子理工学教育研究センター、量子科学技術研究開発機構高崎研究開発センターに設置されたタンデム型加速器からの2.8 MeVのヘリウムイオン(He2+)、5 MeVの炭素イオン(C2+)、9 MeVの酸素イオン(O4+)、20 MeVの銅イオン(Cu12+)をプローブビームとして用い、試料表面に対して15°で入射し、イオンとの弾性衝突により入射方向に対して30°あるいは40°前方に散乱されたLi+イオンのゲート通過時間、エネルギーとその数をそれぞれ時間検出器(TGD)および半導体検出器(SSD)により測定した。同時に、入射方向に対して165°あるいは170°後方に弾性散乱されたHe+、C+、O+、Cu+イオンを検出(RBS)することにより、電池の構成元素およびそれらの濃度分布を評価した。TOF-ERDおよびRBSのスペクトルから、Li濃度分布がわかるだけでなく、HがLiCoO2のバルク内、Au/LiCoO2およびLATP/Ptの各界面に存在することがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

全固体リチウムイオン二次電池の作製を行う際に、既存のパルスレーザー堆積装置だけでなく、マグネトロンスパッタリング蒸着装置を取り入れることにより、電池作製時間の短縮が可能となった。また、若狭湾エネルギー研究センターだけではなく、京都大学附属量子理工学教育研究センターおよび量子科学技術研究開発機構高崎研究開発センターに設置されたタンデム型加速器の共同利用が可能となったため、高エネルギーのヘリウム、炭素、酸素および銅イオンをプローブビームとして用いることができるようになり、深さに対するリチウム濃度分布を分解能を高くして測定することが可能となった。次年度は、電池に電圧を印加したり、加熱しながらその場でリチウム濃度分布を計測し、リチウムイオンの動的挙動を解析する予定である。

今後の研究の推進方策

平成29年度に作製した全固体リチウムイオン二次電池、試料ホルダーおよび改良した超高真空装置を用いて、充電時の場合、LiCoO2正極からLATP固体電解質内に形成されたその場LixTiy(PO4)3負極への電位勾配により駆動されて流されるリチウムイオンの流量をTOF-ERD法によりその場測定する。このとき、LiCoO2およびLATP中のリチウム濃度を加熱温度(22~400℃)および電圧(±3.5 V)をパラメータとして測定する。次に、放電時の負電極から正電極への化学ポテンシャルの差によって流されるリチウムイオンの流量をTOF-ERD法によりその場測定する。さらに、その場測定と同時に、既存の直流電気抵抗および交流インピーダンス測定装置を用いて、各条件におけるリチウムイオン二次電池のリチウムイオン伝導度を測定する。同時測定が予定通り進まなかった場合は、TOF-ERD法およびXPS法によるリチウム濃度測定とリチウムイオン伝導度測定を個別に実施する。

次年度使用額が生じた理由

平成29年度の全固体リチウムイオン二次電池作製およびリチウム濃度分布測定において、予算を執行すること無しに既存の装置をある程度そのままの状態で利用して研究を遂行することができた。
次年度は、正極のLiCoO2や負極のLixTiy(PO4)3内のリチウムの占有位置およびリチウムイオンの移動軌跡を調べるために第一原理VASP計算コードの権利を獲得する予定である。また、全固体リチウムイオン二次電池を真空中で加熱するための試料ホルダーの改良、真空排気装置 (ロータリーポンプ、真空用銅ガスケット、スエジロック、ステンレスチューブ、バリアブルリークバルブ、フランジ、導入端子等)、およびイオンビーム分析測定装置に必要な半導体検出器(SSD)を購入する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 反跳粒子検出法による全固体リチウムイオン二次電池内の軽元素の動的解析2017

    • 著者名/発表者名
      土屋文
    • 雑誌名

      J. The Surface Science Society of Japan

      巻: 38 ページ: 182-187

    • 査読あり
  • [学会発表] ERDAによるリチウムの動的挙動の研究2017

    • 著者名/発表者名
      土屋文
    • 学会等名
      日本物理学会
    • 招待講演
  • [学会発表] Dynamic Behavior Analysis of Hydrogen and Lithium in All-solid- state Li+ Ion Secondary Batteries under Charging Using Elastic Recoil Detection2017

    • 著者名/発表者名
      B. Tsuchiya, S. Yamamoto, K. Takahiro and S. Nagata
    • 学会等名
      21th Int. Conf. on Secondary Ion Mass Spectrometry (ICSIMS 2017)
    • 国際学会
  • [学会発表] 加熱された全固体リチウムイオン二次電池中のリチウムイオン伝導挙動2017

    • 著者名/発表者名
      土屋文、高廣克己、山本春也
    • 学会等名
      日本金属学会
  • [図書] 「全固体電池のイオン伝導性向上技術と材料、製造プロセスの開発」、第11章 全固体電池、材料の分析・解析技術、4節 金属/Li電解質/金属キャパシタの電圧印加によるLi濃度分布変化のMeV重イオンビームその場・解析2017

    • 著者名/発表者名
      森田健治、土屋文
    • 総ページ数
      403-411
    • 出版者
      技術情報協会

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公開日: 2018-12-17  

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