研究課題/領域番号 |
17K06847
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
森 嘉久 岡山理科大学, 理学部, 教授 (00258211)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 熱電材料 / 高圧合成 / 高圧物性 / Mg2Si / シリサイド半導体 |
研究実績の概要 |
出発原料としてMgH2粉末を使用した高圧合成は非常に順調で、良質な微粉末が入手できたことからこれまでより低い温度での合成が可能であることが分かった。また微粉末であるため、固相反応の温度領域であるにもかかわらず反応速度が速かったので、残留物の少ない試料を合成することができた。 高圧合成はこれまでピストンシリンダー装置を使用して高圧合成実験をしてきたが、より簡便な方法を目指すために、ホットプレス装置あるいはクランプ式の高圧セルを利用した合成も試みた。結果として、新たに設計・開発したクランプ式加圧セルと簡易真空パック、電気炉の組み合わせにより簡便に高圧合成することに成功した。実際に合成された試料をXRDにより評価すると、これまでと遜色ない純度でしかも短時間に合成できるようになったので、効率的な高圧合成実験の研究としては順調に遂行出来ている。 しかし、簡易真空パックは合成中も密封状態を保つため、初めに仕込んだ出発原料の粉末試料表面に吸着した酸素が存在する以上、その酸素を合成中に排除するもしくはMgやSi以外と反応させて、酸化物を合成させないための検討が必要である。MgH2粉末が高温領域で水素を放出するため、Mgが反応する際は、水素還元的な合成環境になっているが、酸素がその水素と反応するだけでなくMgとも反応するので、現在は真空電気炉での合成実験を開始している。 一方、高温高圧下での熱電性能実験は、岡山大学の惑星物質研究所にある6軸超高圧発生装置を利用して順調に開発・測定ができている。熱伝導度測定は出来ていないが、ゼーベック係数と電気伝導度は高温高圧下で同時測定できるようになり、実際AlドープしたMg2Si熱電材料の圧力依存性の結果を得ることができ、次年度の国際会議でInviteとして報告することになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの高圧合成法からより簡便な装置での合成を目指した実験は計画通りに遂行されている。特に設計したクランプ式高圧セルが順調に機能したため、簡易真空パックとの組み合わせでもこれまでと遜色ない試料を合成することができた。 高温高圧下での熱電性能測定実験では、限られたマシンタイムでの実験であったため十分な実験時間を確保することが難しかったが、事前準備をしっかりすることで研究計画通りの研究結果を得ることができた。今後さらに効率的な研究をするためには、研究室での実験を併用することが重要である。 研究室での実験をするためには、既存の250トンプレスに電源装置及びトランスなどを組み込んだ高温高圧合成装置を立ち上げることが重要であり、そのプレスに応じた電源装置やトランスの選定や仕様の詳細を検討した。他の研究室より現在使用しなくなった電源装置を譲り受けることになったことと、それに応じて新規購入する電源装置の仕様を変更した方が効率的であることが明らかとなったので、当初計画していた電源装置の発注が遅れてしまった。その結果として装置の立ち上げに関する研究計画は全体的にやや遅れた状況になってしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
高圧合成に関しては、クランプ式の高圧セルと簡易真空パックの組み合わせである程度良質な試料が合成できることが明らかとなった。簡易真空パックではその真空度が十分ではないため、今後はその高圧セルと真空電気炉との組み合わせにより、簡便で未反応物や酸化物の少ないMg2Siの高圧合成実験を実施していく計画である。 合成した試料の評価は、XRDによる構造物性評価だけでなく、熱電性能の測定も組み合わせた評価を進め、ZT値として評価が出来るようにしていきたい。 特に試験的な実験結果として、出発原料をMg粉末の代わりにMgH2粉末を使用した場合、その高圧合成した焼結試料の熱伝導度が前者と比較して50%以下になる結果を得ているので、熱伝導度に対して効果的な合成法の確立も目指していく。 高温高圧下での熱電性能測定に関しては、IPMの6軸加圧装置より高圧下での熱伝導度を除く熱電物性が測定可能になったので、マシンタイムを確保しながらパワーファクターとしての測定を実施していく。熱伝導度測定はセラミックセンターに委託して測定を実施する。 また少し遅れ気味である研究室の高温高圧合成装置の立ち上げを早急に実施して、効率的な研究が出来る体制にしていく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画として、本研究室所有の250トンプレスに電源とトランスを準備して、高温高圧合成装置を研究室に立ち上げる計画であったが、装置の選定とその規格に時間を要したため、発注が1月にまでずれ込んでしまった。 トランスには年度内に納入されたが、備品である交流安定化電源装置の納期が年度を超えたため、平成29年度からの繰越金が多くなってしまった。 商品の納期は平成30年度の5月なので、実験計画としては少し遅れているが、予算計画としては大きな変更はない。
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