本研究課題は,一昨年度に終了する計画であったが,その研究成果を報告するための学会発表及び研究会等が新型コロナウイルス感染症の影響で開催中止となったため,昨年度も継続することとなった。 これまでMg2Si熱電材料の合成にMgH2の微粉末とSi粉末を使用して,高圧合成することで,その合成物のXRDによる構造解析評価や高温下におけるゼーベック係数及び電気抵抗率測定などの結果が常圧での合成物よりも向上したことを報告した。ただし,長時間高温環境下に置くことによる表面酸化の課題も残っているため,真空電気炉との組み合わせでその課題克服に向けた研究を実施したところ,合成中の試料酸化によるMgOの含有量が飛躍的に減少することを確認した。 高圧合成した熱電材料を使用して実際に発電デバイスを試作する課題に関しては,実際に高圧合成した9つの焼結体を直列に並べたモノレグ構造の熱電デバイスを試作してその発電性能を評価した測定結果からは,温度差200℃に対して650mVの熱起電力を得ることに成功した。この値は試算した値と同等もしくはそれを上回る値となったおり,デバイス応用の可能性が出てきた。課題としては電極部の接触抵抗が大きいため,純分な電力として取り出すことができないことが明らかとなった。 残りの研究期間では,電極と熱電材料との接触抵抗を減少させるために,電極と熱電材料を一体で高圧合成することを試みており,その電極材の材料としてはMg2Siとの種類を開発にも取り掛かることにした。いくつかの金属やその合金を電極材として一体合成したものの中では,Mg2SiとNiの合金による電極が,最適なものとなった。
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