研究課題/領域番号 |
17K06849
|
研究機関 | 公益財団法人電磁材料研究所 |
研究代表者 |
池田 賢司 公益財団法人電磁材料研究所, その他部局, 研究員(移行) (40769569)
|
研究分担者 |
薮上 信 東北大学, 医工学研究科, 教授 (00302232)
小林 伸聖 公益財団法人電磁材料研究所, その他部局等, 研究員(移行) (70205475)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ナノグラニュラー薄膜 / 磁気誘電効果 / 誘電率 / 磁気抵抗効果 |
研究実績の概要 |
平成30年度は磁性金属としてFeCo合金、絶縁層としてMgFを用い、FeCoの組成が異なる層を交互に積層したナノグラニュラー薄膜を作製し、その高周波誘電特性を測定した。 FeCo組成が約20at.%の絶縁性が高く緩和時間が長い低誘電率層(比誘電率30@1MHz, 18@1GHz)と、FeCo組成が約30at.%の緩和時間が短くTMR効果とTMD効果の両方が確認される高誘電率層(比誘電率37@1MHz, 27@1GHz)を、積層数を変えて交互に積層した薄膜を解析した結果、ナノグラニュラー薄膜の膜厚を一定として積層数を2層→20層→50層と増加させるに従い、すべての周波数帯域において比誘電率が増加することが確認された。比誘電率の周波数特性は、2層積層試料が38(@1MHz)から16(@1GHz)、20層試料が50から20、50層試料が54から25となり、積層数の増加によって比誘電率が高くなることが確認された。積層化により低い周波数帯域の誘電率は高誘電率層よりも高くなり、高い周波数帯域では高誘電率層より低く、特に2層積層試料は低誘電率層よりも低い値となっている。 積層化によって比誘電率が高くなることは、トンネル伝導に起因した電気分極が多く生成されていることを意味し、周波数の増加に伴う誘電率の減少が大きいことは誘電緩和が狭い周波数帯域で発生していることを示唆している。以上の結果は、Debye-Frorichモデルにおける誘電緩和強度であるΔεが大きくなり、緩和時間の分布を示すβ(大きいほど分布が狭くなる)が増加していることと対応している。Δεの増加は積層界面における電気分極の形成が寄与していると推測できるが、βの増加の原因は現段階では不明である。今後、構造解析などを行うことにより詳細な原因を明らかにする予定。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
積層化による比誘電率の増加など、TMD効果とTMR効果を組み合わせることによると思われる特異な現象の発現は確認されたが、その原因解析が十分に進んでいないため
|
今後の研究の推進方策 |
今期解析を行った積層薄膜の微細構造観察を行うことにより、薄膜構造とTMD/TMR効果の周波数特性の関係を明らかとする。 上記結果を踏まえ、薄膜構造の最適化を行い、高周波電気特性の磁界による制御を試みる。
|