研究課題/領域番号 |
17K06850
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
砂金 宏明 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 環境エネルギー研究拠点, 主幹研究員 (40343850)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | フタロシアニン / リン / 化学プローブ / 蛍光 / 分子スイッチ / amphoteric |
研究実績の概要 |
生体組織深部における分子イメージングを可能にするため、深赤~近赤外域(650-900 nm)に高い輝度(モル吸光係数と蛍光収率の積)の蛍光を発する水溶性化学プローブを開発することを本研究の目的とする。この波長領域に強い光吸収と蛍光を示す有機色素フタロシアニン(一般に水に不溶で会合しやすい)を五価リンの錯体とすることで、水中でも会合し難い新規蛍光色素を開発する。酸・塩基と迅速に反応するリン錯体の特性を利用し、化学プローブとしての可能性を検討する。この研究の成果は、緑色光を用いるが故に小動物や表層組織に限られた従来のイメージングを大型動物や組織深部への発展を可能とし、癌の蛍光診断の実現と普及にも貢献すると期待される。 初年度は、五価のリンを中心元素とし、アルキル基あるいはフェノキシ基を置換基とする3種の新規フタロシアニン錯体を合成し、質量分析・元素分析・NMR等によって同定するとともに、その一般的溶媒への溶解性と会合性を検討した。その結果、置換基の種類に関わらず、リン錯体はエタノール等の低級アルコール類に良く溶け、また吸光光度法でモニター可能な上限濃度まで会合を起こさないことを明らかにした。その化学的性質と分光学的特性(吸光及び発光)を明らかにした。これらのリン錯体はいずれも両性(amphoteric)であり、酸・塩基のいずれとも反応し、それぞれ共役酸(プロトン化体)と共役塩基(脱プロトン化体)を生じることを明らかにした。また生じた共役酸・塩基ともにオリジナルの化学種とは異なる波長に発光極大と蛍光量子収率をもつことが判明し、化学プローブとして有望であることが示唆される。さらにフェノキシ置換体を原料として、置換基をスルフォン化することにより、リン錯体を水溶化することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り、両性な五価リンのフタロシアニン錯体が酸・塩基と反応し、それぞれの生成物が初期状態と異なる光吸収・発光特性を示すことが明らかになった。またフェノキシ置換フタロシアニン錯体の置換基をスルフォン化することにより、アニオン型リンーフタロシアニン錯体の合成に成功した。進捗状況はほぼ当初の計画通りであると言って差し支えない。
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今後の研究の推進方策 |
概ね順調に進んでいるので、当初の計画通りに遂行していく予定である。今年度以降は前年度に得られたアニオン型錯体について、主に分光学的手法を用いて、その水溶性・会合性を調べる予定である。また水溶液中における吸光・発光特性とその外部刺激(pH変化等)に対する応答性を検討する。さらにカチオン型の錯体の合成に着手する予定でいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初物品の見積を取得した時点と実際に契約がなされた時点とで、価格に若干の変動(減額)が生じたために、未使用額が生じた。この額については、翌年度の物品費の一部として使用する予定でいる。
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