研究課題/領域番号 |
17K06854
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
伊藤 吾朗 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (80158758)
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研究分担者 |
岩本 知広 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (60311635)
倉本 繁 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (10292773)
小林 純也 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 助教 (20735104)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アルミニウム合金 / 析出強化 / 応力腐食割れ / 粒界 |
研究実績の概要 |
Al-5.7%Zn-2.4%Mg-1.4%Cu合金(等軸粗大粒材)について、2017年度は、ステップ・クェンチ処理(SQ)が、強度を犠牲にすることなく耐水素脆化(HE)特性改善に有効であることを示したが、2018年度は新たに耐応力腐食割れ(SCC)特性に及ぼすSQ処理の影響を調査した。また2017年度はいずれの特性も低いとされる最高強度の調質(T6)材を比較対象としたが、2018年度は、T6材に加えて、10~15%の強度低下を伴うもののこれら特性を改善するために行われる過時効(T73)処理材も比較対象とした。溶体化処理後、200~300℃で1minのSQを行った後、人工時効したSQ材と、普通に水焼入れ後人工時効したT6材、水焼入れ後100℃で500min予備時効し160℃で40h過時効したT73材について、短冊状試験片を作製し、3点曲げ法により表面に0.2%耐力相当の引張応力を与えた状態で、5.3%の塩化ナトリウムと0.3%の過酸化水素水を含む水溶液中に連続浸漬し、破断までの日数(SCC寿命)で、耐SCC性を評価した。 その結果、SQ材はいずれもT6材と同等の強度、よりも高い強度を有することを明らかにした。またSQ材の中では、SQ温度が低いほど耐SCC性が高くなった。しかしSQ材の中でもっともSCC寿命の長い200℃SQ材でもT73材には及ばなかった。ただし前述の通りT73材の強度は、T6材やいずれのSQ材に比べて、10%以上低かった。破面を観察した結果、いずれの試験材も粒界腐食の進行により破断に至ったと判断された。この亀裂の進展機構は、2017年度のHEと大きく異なるものの、耐HE性の高い材料は耐SCC性にも優れることが明らかになった。2019年度は、粒界析出物の観察を行うとともに、より低い温度でのSQを行い、T73を上回る材料の開発につなげたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記したように、目的通りに耐応力腐食割れ特性の改善を確認している。しかし粒界上の析出物がSQにより想定通り粗くなっているか、SQ後の人工時効によりSQ時に生じた析出物の間に微細な析出物が生じているかについてもまだ確認できていない。 以上の進捗状況は、およそ当初の想定範囲内であるので、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
SQによる粒界析出物制御を利用した、耐SCC性・耐HE性の改善について、2019年度は、粒界析出物の観察を行うとともに、より低い温度でのSQを行い、T73を上回る材料の開発につなげたい。これと並行して、ひずみ誘起粒界移動による粒界形状制御を利用した延性の改善も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までの進捗状況に記したように、粒界析出物の観察を行っていない関係で、小額の次年度使用額が発生した。2019年度分予算と合わせて、2019年度に上記観察を行うことに使用する予定である。
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