研究課題/領域番号 |
17K06857
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
山田 基宏 豊橋技術科学大学, 工学研究科, 助教 (00432295)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コールドスプレー / セラミック / 酸化チタン / 酸化イットリウム / 粉末材料 |
研究実績の概要 |
固体粒子積層成膜法であるコールドスプレー法では、酸化チタン以外のセラミックス材料の厚膜形成は極めて困難であり、報告例は少ない。これまでの研究において、コールドスプレー法による酸化チタン成膜は、酸化チタンの材料固有の物性によるものと、粉末材料の微細構造に由来するものとの2つのメカニズム提案がなされてきた。これに対し、本研究では粉末材料の微細構造による影響調査を目的とし、他のセラミックス材料である酸化イットリウムの成膜を試みた。基材衝突時の粒子変形に大きく関与すると考えられる粉末材料の比表面積に着目し、種々の比表面積の酸化イットリウム粉末を準備し、成膜試験を行った。 比表面積(BET)が20~100m2/gの4種類の粉末を用いた成膜実験により、BETが70m2/g以上の粉末において、酸化チタンと同様の100μm以上の厚膜形成が確認された。また、皮膜は緻密な組織を呈しており、固体粒子衝突による膜の緻密化が起こったと考えられる。このことから、コールドスプレー法によるセラミックス材料成膜においては、酸化チタン固有の材料物性に起因するものではなく、粉末の微細構造によるものであることが示された。 一方で、成膜可能なコールドスプレー条件が酸化チタンと酸化イットリウムでは異なることも明らかになった。酸化チタンでは高圧・高温のガス流を用いることで、より高効率での皮膜形成が可能であるのに対し、酸化イットリウムでは低圧・高温の条件において厚膜形成が確認できた。このことから、類似の粉末構造を有するセラミックス材料粉末においても、適正なコールドスプレー条件が異なることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画において、平成29~30年度にかけて粉末材料の微細構造の重要性と他のセラミックス材料への適用を予定していたが、平成29年度中にコールドスプレー法による超音速衝突接合が可能なセラミックス材料として、新たに酸化イットリウムの厚膜形成に成功した。また、粉末材料の比表面積が粒子付着への大きな因子となることも明らかになり、コールドスプレー成膜条件の選定も行ったことから、順調に進展しているといえる。ただし、提案している粉末の特殊なナノ構造など、粉末材料や皮膜の微細構造観察が十分にできていないことから、達成度としては「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
酸化チタン以外のセラミックス材料である酸化イットリウムの成膜が可能となったことから、これらの原料粉末および得られる皮膜の評価を行っていく。特にTEMによる粉末の微細構造観察から、提案してきた固体セラミックス粒子接合を実現する粉末の微細構造の三大要因の確認を行う。また、平滑基材上に捕集した個々の粒子の付着形態観察を行うとともに、付着粒子断面を観察することで、セラミックス粒子の偏平・付着挙動の調査を行う。 成膜プロセスとして、酸化チタンと酸化イットリウムでは適正なガス圧力およびガス温度条件が異なったことから、飛行粒子速度測定システム(DPV-2000)を用い、超音速ガス流中での各粒子の粒子速度および粒径を計測し、衝突エネルギーが粒子付着に与える影響を調査していく。 また、今回得られた酸化イットリウム皮膜は300μm以上の膜厚になると剥離する傾向が見られた。これは、皮膜-基材界面の密着性に問題があると考えられることから、微細構造観察による界面での付着メカニズム調査および更なる成膜条件の適正化により、皮膜密着強度の改善を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度の酸化イットリウムの成膜実験では、プロセスガス条件がこれまでの酸化チタンよりも低い圧力領域であったため、当初予定よりもガス消費量が少なく残額が生じた。平成30年度の研究では、より幅広い成膜条件を用いた実験により皮膜特性の改善も行うことから、プロセスガスに助成金を使用していく。 また、平成30年度に本内容について特許出願を行い、その成果を国際会議等で公開するための出張旅費等にも使用していく。
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