研究課題/領域番号 |
17K06858
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宅田 裕彦 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (20135528)
|
研究分担者 |
浜 孝之 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (10386633)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 結晶塑性有限要素法 / 粗大結晶粒材 / デジタル画像相関法 / 不均一変形 |
研究実績の概要 |
平成30年度に主に得られた成果を下記に箇条書きに示す. (1)アルミニウム合金(面心立方金属)や鉄系材料(体心立方金属)を対象として,粗大結晶粒試験片を作成する方法を検討した.その結果いずれの材料においても,予ひずみを与えて転位密度を高めた上で熱処理を施すことで,結晶粒が粗大化することを確認した.ただし,純チタンで得られたほどの粒成長は実現できなかったことから,これらの材料を用いて実験を行う場合は,純チタンとは異なる分解能を考慮する必要があることが示唆された. (2)アルミニウム合金材を対象として,単純引張/圧縮試験,反転負荷試験,二軸引張試験,せん断試験などを行うことで,結晶塑性解析によるモデル化を行った.数種類の結晶塑性モデルを用いて比較検証した結果,転位密度ベースのモデルに離散転位動力学で同定された相互作用行列パラメータを用いる場合が最も高精度であることが明らかとなった.そこでアルミニウム合金材に対してはこのモデルを用いることとする.一方純チタン粗大結晶材については,1種工業用純チタン板に対する文献値に比べて臨界分解せん断応力を高めに設定することで,一軸引張時の応力-ひずみ関係を良好に再現できた.またこのように臨界分解せん断応力を高く設定する必要があるのは,成分分析の結果,本材料は1種工業用純チタンに比べて比較的純度が低いためであることが明らかとなった. (3)純チタン粗大結晶粒材の有限要素モデルを作成した.まず,デジタル画像に基づいて試験片および結晶粒の形状を模擬した有限要素モデルを作成した.結晶粒内のメッシングには,解析精度の観点からフリーのメッシングソフトを活用した.なお,結晶粒界は簡単のためボクセル近似とした.またモデル上の各結晶粒に対して走査型電子顕微鏡により測定した結晶方位情報を割り当てることで,実際と同じ結晶方位分布を持つ有限要素モデルの作成に成功した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度当初の研究実施計画で挙げた,(1)アルミニウム合金(面心立方金属)や鉄系(体心立方金属)の材料についても粗大結晶粒試験片の作成を試みる,(2)素材の基本的な材料特性を取得するとともに,結晶塑性解析で必要となる材料パラメータの同定を行う,(3)粗大結晶粒材の有限要素モデルを作成する,といった項目が順調に進められた.以上の結果を鑑みて,【おおむね順調に進展している】と判定した.
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度は当初の予定どおり順調に進展したことから,平成31年度は以下の内容を実施する予定である. (1)結晶塑性有限要素法を用いて純チタン粗大結晶粒材の引張変形解析を実施する.それにより,変形に伴う板面内のひずみ分布を比較対象として,まず平成30年度に決定した材料パラメータによりどこまで予測可能か検討する.それにより,従来のパラメータ決定方法の妥当性を検証する. (2)純チタンでは,先行研究からすべり系・双晶系ごとの臨界分解せん断応力の大小関係がある程度明らかにされている.一方で,底面すべり系については文献によってその取扱いが大きく異なり,どの程度の値にすべきか指針が明らかではない.そこで,主すべり系である柱面すべり系と底面すべり系の臨界分解せん断応力の比を種々に変化させた数値実験を行うことで,面内ひずみ分布の観点から底面すべり系の適切な臨界分解せん断応力を決定可能か検討する.またその考察を通して,本課題の目的である粗大結晶粒材を用いたパラメータ同定の高精度化がどこまで実現可能かを検証する. (3)純チタン以外の材料についても,順次粗大結晶粒材の成形実験および解析を進める.それにより,立方晶金属についても同様のアプローチが可能かを検証する.なお,平成30年度の研究から純チタンの場合とは異なる分解能を考慮する必要があることから,デジタル画像相関法および有限要素メッシュ分割には特に注意して研究を進める所存である. (4)最後に本研究を総括することで,本研究で開発した技術の今後のさらなる適用範囲の拡大と残された課題を検討する.
|