Bi2Te3系熱電材料は,物性に大きな異方性を有しており,性能向上には結晶粒サイズや結晶配向などの組織制御が重要である。本研究では,周期的圧力下でのパルス通電焼結法により,微細結晶粒と高い結晶配向を有するBi2Te3系熱電材料の作製を試みた。本手法はパルス通電焼結時に一軸圧力を周期的に印加することにより,緻密化とともに結晶配向を促す手法である。 平成30年度までの研究では典型的なp型熱電材料であるBi0.4Sb1.6Te3に対して焼結温度350~425℃で焼結保持時間を0~60minとし,焼結温度・保持時間増加とともに結晶粒サイズが大きくなり,結晶配向が強くなることを確認した。令和元年度は、前年までに引き続き、p型Bi0.4Sb1.6Te3について焼結温度・保持時間、様々な周期的圧力パターンの印加による組織制御を進めた。また、n型Bi-Te-Se系材料の成分系および作製条件の検討を行った。その結果、焼結温度、保持時間、印加圧力により組織を広い範囲で制御可能であることが示され、組織に依存した熱電特性の系統的な変化が再現良く得られた。また,n型Bi2Te2.7Se0.3については、ドーピングにより広い範囲でキャリア濃度を変化させた系においても結晶配向により電気抵抗率低減が可能なことを確認した。 以上,周期的圧力下でのパルス通電焼結法によるBi2Te3系熱電材料作製において,周期的圧力が結晶配向を促すこと、焼結温度・保持時間の選択により広い範囲での組織および熱電物性の制御が可能であることを示すとともに,組織と熱電特性の相関に関する系統的な知見を得た。
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