Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体(GaAs)を主な加工対象として,①二次元平面上への位置情報の付与,②物質固有の自発的秩序構造形成能力,③各種湿式プロセスを組み合わせた技術で,幾何学構造をナノ・マイクロスケールで制御する原理を理解すると共に高次構造体を低コスト・高スループットで作製する技術を開発し,個別に確立した技術・情報を相互に関連付け微細加工技術として最終的には体系化することを目的としてきた。 初年度は, GaAs基板上にエッチング時の触媒となる金を100 nm周期で島状に形成した。その後,酸と酸化剤からなるエッチング液(エッチャント)に金を付与した基板を浸漬し化学エッチングを施した。その結果,触媒として用いた金が基板内に沈降する正パターンのエッチングだけでなく,条件によっては金周囲がエッチングされる逆パターンのエッチングも生じることを確認し,得られた成果は学術論文として公表した。 二年目は,パターニング精度の向上を目指し,シリコンなどの半導体表面にレジストを塗布し,エッチングマスクの作製にも取り組んだ。所属大学の研究設備では,ナノメートルスケールで規則的なパターンを持つマスクの作製は困難であったことから,パターン周期をマイクロメートルスケールに設定し,周期的な開口部を持つマスクやライン状のパターンを持つマスクの作製条件を確立した。 最終年度の三年目は,貴金属に代わる化学エッチング時の触媒として炭素材料の可能性を模索し,触媒のサイズ,形態,分布などの触媒側の条件とエッチャント組成,基板仕様などのエッチング条件との関係について基礎データを集積した。GaAs基板はSiに比べ製造コストが高く,普及するまでには技術課題が多く存在するが,次世代,次々世代デバイスへの応用可能性を秘めた魅力的な材料であり,基礎研究を通じて情報を整理し研究基盤を整備しておく意義は大きいと考えている。
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