研究課題/領域番号 |
17K06870
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
川畑 美絵 (太田美絵) 立命館大学, 理工学部, 助教 (30710587)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 粉末冶金 / 強度延性バランス / 多変量解析 |
研究実績の概要 |
調和組織材料の機械的特性を支配する組織因子を抽出し、多変量解析(重回帰分析)を利用して、調和組織制御によって発現する機械的特性の予測を可能にすることが本研究課題の目的である。合金化に頼らない材料強化法として注目されている調和組織材料の優れた機械的特性と、その特性を支配する組織因子の関係を、統計学の手法を用いて『見える化』することで、実用化に向けた力学特性設計指針を確立する。 本研究では、以下の3つの課題について取り組む計画である。【課題1】では、純ニッケルを対象に、加工条件や焼結条件を変えた材料を作製・評価することで、機械的特性への影響度の高い組織因子を抽出する。【課題2】では、試作条件ごとの機械的特性と組織因子から、多変量解析を用いて立式する。【課題3】では、上記の手法を実用金属材料(SUS304L)に展開し、実用レベルに近い設計指針を確立する。 材料の強度と組織因子との間には、Hall-Petch則と呼ばれる経験則が成り立つことが知られており、降伏強度は平均結晶粒径の平方根の逆数に比例する、すなわち、結晶粒径が小さくなるほど降伏強度は上昇する。本年度の検討において、粗大結晶粒と微細結晶粒の2種類の結晶粒径分布を有している調和組織材では、一般の均一材料とは比例関係の傾きが異なることが明らかとなった。このような特異な現象は、調和組織材のネットワーク構造に起因しているものと考えられる。結晶粒単位での「要素個々」の単なる線形複合則で「強さ」が実現されているのではなく,ナノ・ミクロからマクロへの幅広いスケールで微細組織が周期性を持つように制御されたことで生まれる各要素間の非線形調和によって,線形複合則を遥かに超える「強さ」と「ねばさ」を同時に実現していることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
純ニッケルを供試材として、種々の実験条件での調和組織材料の試作を行い、Shell割合を0%~65.4%の種々の条件の試料を作製した。Shell割合に対してもっとも影響の大きい因子はMM時間であることがわかった。また、MM時間が長くなると、Shell割合だけでなく、Shell/Coreともに結晶粒径も減少することが明らかとなった。これらの実験条件と力学特性から、多変量解析による実験条件の最適化を進める。 また、調和組織材におけるHall-Petch則通りに記述できない傾きの上昇に関しては、結論付けるにはデータ点数が不十分であることから、今後、さらに種々の条件による試験片作製と力学特性の評価を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である今年度では、ニッケルの多変量解析の式が他材料においても適用できるかを見極めるために、ステンレス鋼(SUS304L)に展開する。 材料が異なると種々の因子にかかる係数も異なってくることは容易に推測できるが、材料種そのものを何らかの形で組織因子のひとつに組み込むことで、材料種による場合分けをすることなく立式することを目標としたい。材料をSUS304Lに変更して、ニッケルと同様の検討を進めていく。
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